紙の本
ねずみは皆いっしょだけど…、ねずみ女房はチト違う
2001/09/15 23:13
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投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
働き者の女房ねずみは、お気楽なおすねずみと子供達の世話、食料探しや巣の掃除で大忙し。そんな毎日の中で女房ねずみは、「何だかはわからないけれど、いまもっていない何かがほしい」と考え続けては、窓じきいの上にのぼって外の景色を眺めます。
ある日、女房ねずみが住む家に、森で捕まえられたハトがやってきます。ハトは女房ねずみに窓の外の世界を話して聞かせます。高い空から見た景色や風や雲の話に、女房ねずみは目がまわってしまうように感じましたが、それでも次々にお話をせがみます。
そんなことが続いたある月夜の晩、女房ねずみは、籠の中で日に日に弱っていくハトを見て、ハトを籠から逃がしてやります。森へと飛び立つハトの後姿を見て「ああ、あれが、飛ぶということなんだわ。」と思い、そしてちょっぴり泣きます。
お話はこれだけ。森に帰ったハトが後日恩返しに来たり、女房ねずみが外の世界に出ていくこともない。ねずみはあくまでもあの小さな脳みそで考え及ぶことを、ハトはハトの脳みそで考え及ぶことでお話が出来上がっている。そしてここがこの物語の素敵なところだと思う。
「モノが見える」から「モノを見る」に、また、自分だけに当てはまる幸せの見つけ方などを教えてもらえたような気がした。デュポアの絵もとても愛らしい。
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河合隼雄さんの著書で書いてあり、それから興味を持って読みました。
最初に河合さんの考えとあらすじを読んでいたので、
これだけを純粋に読んだときとの感想とではだいぶずれてくると思いますが、
それでもハトとねずみ女房との友情…ではなく、実際は恋だなぁと改めて思います。
シンプルな中にも深い愛情があることに気付かされて、ぐっときます。
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とても美しい物語。
ウィルキンソンさんのお屋敷の壁の中に、めすねずみが暮らしていた。ある日、ウィルキンソンさんの所へ、つかまった鳩がやってきました。鳩は金色の鳥かごで飼われましたが、森が恋しくて仕方がなかったので、食べ物も飲み物も喉を通りません。少しずつ弱ってしまいました。そこへ、めすねずみがやってきました。めすねずみは、鳩から、今まで見たことも聞いたこともない家の外の世界のことを聞き、外の世界のことが気になってしまいました。そのためしばらくぼーっとしてしまいましたが、しかし、めすねずみにはお腹を壊している夫と、子供たちの世話や家事がありました。いつの間にか時間が経ち、しばらく鳩のところへ行く事ができませんでしたが、ある日の夜、気になって鳩のところへ行きました。そして、窓が開いている事に気付き、どうにか逃がしてやることにしました。
その日、めすねずみは初めて星を見て、それが何か分からず、金色のボタンだろうと思いました。ボタンでないとすれば、何かふしぎなものだろうとも思いました。でも、はとに話してもらったお話ではなく、自分の目で、自分の力で見たものだから、そんなに不思議じゃないと考えなおしました。
やがて孫ができました。見た目は孫もめすねずみもそんなに変わりがありませんが、他のねずみたちの知らない事を知っているから、どこか少し違うところがありました。
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末盛千枝子さんの『大事なことは全て絵本から教わった』で紹介されていた本です。
亭主関白な夫をもつねずみがある日鳩に出会い、外の世界のことを知っていきます。
やがて鳩は旅立ち、ねずみ女房は自分の世界に帰って分相応に生きていきます。
それでも以前とはちょっと違う、豊かな人生を送りましたというお話。
ねずみが出てくるということで、クルミドに合うかもしれないと読んでみました。
背表紙のデザインがちょっと気に入らず、棚に並べるのは躊躇しています。
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これを「マディソン郡の橋」だという佐野洋子が可笑しい。
この作者、「人形の家」の作者だったんだ。そこにびっくり。
「人形の家」も、この「ねずみ女房」も、楽しい楽しいって話ではなく、奥のほうに苦みがあります。
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ウィルキンソンさんの家に住んでいためすねずみは、この家を全世界だと思っていました。窓から見える庭や森は私達にとっての星のように遠いものだと思っていたのです。捕まえられ、鳥かごに入ったはとを見たときも、猫のように恐ろしいものだと思ったのですが、鳥かごの中には豆があったので、また出かけて行き、鳩と話をするようになっためすねずみ。『知らない世界を知る』ということは、理屈ではなく、心動かされるものです。ねずみは、夫に叱られ、幼い子供達の為に忙しい毎日の中で、やっぱり鳩に会いに行くのです。人間も同じ気持ちを持っていますね。
うちの娘が好きなルーマー・ゴッテン。小さいものを描くのが上手いです。ドロシー・ワーズワスが書いた日記の中の本当の話からとったもので、ドロシーの日記の中のねずみは鳩を鳥かごから出してやらなかったけれど、ゴッテンのねずみは「出してやらなくてはならない」と考えてそうしたのだと、あとがきにあります。
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床や階段が木でできていて・・
フラネレット
ねずみの涙は、アワのたねのように見えます。
わたし、自分で見たんだもの。
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これは大人こそ読むべきお話だと私は思います。
この本を読んで、私もいつかこんなお話を作れる人になりたいと思いました。狭いかごから飛び出した鳩と,狭い世界の中にいるままで,広い世界を理解しあこがれたネズミのおはなし。
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私の両親が結婚した時、お返しとしてこの絵本を配ったと聞いた覚えがある。
当時まだ20代前半だった母がこの絵本を選ぶとは思えないから、40代に乗ろうかとする当時の父が選んだのだろう。
当時の彼は何を考えてこの絵本を配ったのか。そうやって読もうとすると、不思議な気分になる。
話してくれるひとがいなくなっても、私は自分の目で大きな世界を見ることができる。そしてそんな自分を誇りに思える。
父は年の離れた母を預かって、育て上げる心境に近かったのかなぁ。まぁわからないけど。。。
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児童文学に分類されているようですが、子ども向けではないです。
子どもには理解できない。
毎日の暮らしに飽き足りない、何か違うと感じるねずみの女房。
鳥かごのハトに外の世界の話を聞いて想像するだけ。
読みながら、ずっと「いつ出て行くの?出て行って、生きて行けるの?」と思ってました。
結局、ハトが出て行っても、ねずみの女房は一生狭い世界で過ごします。
一歩踏み出す勇気がなかった?外の世界を疑似体験できただけで満足だった?
いろいろ考えさせられます。
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大人になってからははじめて読んだか?
矢川澄子は「堂々たる姦通小説」と評していた。清水真砂子がそれを踏まえて評論しているみたいだから今度読もう。
外を求めていく気持ちはどうしても、内に対する不貞なのだと思った。(もちろん現実世界での寛容さは別問題として)
ねずみ女房の姦通は星をみたときに果たされたのであって、その意味では鳩は窓に過ぎない。
姦通小説といえば江國香織の「真昼なのに暗い部屋」を思い出した。そういえばあれも世界の内側と外側、すなわち窓の話であった。真昼なのに暗い部屋では窓が輝いて見える。陰影礼賛。
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河合隼雄さんの「心の読書教室」で紹介されていたのを見て、気になって気になってしょうがなかった本。
やっと、読めました。読めて良かった。
「わたし、あの戸を開けよう」
そう思っためすねずみの行動の尊さに、涙が出ました。そのきっかけは、ハトが、「おまえさん、どこかへ行ってしまったかと思った」とネズミを抱きしめた、ハトの柔らかくてあたたかい、ぬくもりを感じたからなんじゃないでしょうか。
「わたしは、このことを忘れてしまうだろう」そういって泣いためすねずみの思い。
星を見て、
「私に見えないほど、遠くないんだ」と言っためすねずみ。
大切なことに気付くために、大切なものを失っためすねずみ。
わたしは、なんて欲張りなんだろうと、思いました。
何かを失わずに、何かを得ようとしている。
そんなこと、無理なのだ。
無理なのだと、思い知らされた気がします。
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このお話は、う~ん。何歳くらいから理解できるのかな?
女子なら意外と早く3年生くらいになれば、感じ取れるでしょうか?男子だったら、もうしばらくかかるだろうな。
既定の概念を壊すことに対する恐れや、新しい世界に踏み込む勇気や、抑えきれない興奮なんかが短いお話の中で上手く表現されていると思います。
この時代は女性が抑圧されていた時代ですので、ねずみの女房が主人公ですが、現代の日本に置き換えれば、主人公はねずみの旦那でも子どもでも通用するなと思います。
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2015.9.19市立図書館
40ページあまりのささやかなお話。
このお話については、いろいろな批評がでているけれど(河合隼雄や赤木かん子、清水真砂子のは読んだが他にもあるらしい)、わたしにとって、めすねずみの鳩への感情は友情とも恋・愛情ともちがう、でもとても尊い気持ちだという印象だった。そしてそれは、鳩から見たことのない世界の話を聞くことでしだいに養われた「想像力」によってうまれた感情なのだと思う。
遠いものへ憧れ、他者への共感、そうした気持ちを通じて行動する源泉である想像力をもって、ねずみはちょっと変わった、でもひいひいまごたちから一目置かれる存在になり得たのだろうな。想像力を得ても、ねずみは自分のテリトリーから出て行かず、相変わらずの暮らしのまま老いたけれど、それでもねずみはしあわせだったのだとわたしは思う。
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申し訳ないが異種間不倫萌えだな・・・って・・・。
いや・・・だって・・・あのハトが翼で抱き締めるシーン・・・どこかへ行ってしまったのかと思ったよ・・・とか・・・そのあと旦那に耳噛まれるのまで含めて・・・。