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紙の本
光と闇の最終決戦。勝利者は自分。
2002/12/07 19:56
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投稿者:青月堂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
永劫なる魔性・ラサロムと光の剣の使い手・グレーケン。神話の世界から戦い続ける2人の最終決戦を描いた超大作。作者は、この手垢が何重にも付いてベタベタなテーマを、ファンタジーという扱いではなく、モダン・ホラーとして描いてみせた。それは、スティーブン・キングを思わせるような、細部にこだわった描写と、人物設定のうまさによるものだろう。
ここでは、主要な登場人物達は全て何かしら問題を抱えている。光と闇の戦いは、壮大なハルマゲドンだけでなく、各個人の中でも繰り広げられる。人間全てがその心の中に光と闇を持っていて、勝ったり負けたりを繰り返している。
光の勇者グレーケンですら例外ではない。彼は昔ラサロムとの戦いに勝利し、ようやく永遠の生命から開放された。人として老いることを選択し、痴呆症にかかった妻と緩慢なる死を享受していた。しかし、そこにラサロムが復活し、グレーケンは老骨に鞭を打つことになる。何と弱々しい勇者なのだろうか。何と人間らしい悩みを持った勇者なのだろうか。しかし、力で倒したラサロムはより以上の力を持って復活した。人としての弱さを乗り越えたときに、はじめて闇を打ち倒すことができるのだろう。
これは、ラサロム対グレーケンの戦いではない。全ての人が自分の心の闇と戦う物語である。それがラストで見事に表されている。
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