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「さっき所轄の男に説明できなかった女の顔貌は、言葉の形容を拒んでいた。その輪郭や凸凹はただそのままそこにあり、ただ目の中に差し込んできた。しかし、自分を見上げて睨みつけるその切れ長の目が、大きく、冷たく、深い穴のようであることぐらいは見てとった。顔貌のほかのすべての部分が、その穴に吸い込まれている感じだった。その穴の淵から、周りの空気を寄せつけない硬質な輝きが汗のように滲み出してくる。
・・・一人の女の顔に見入っている自分自身に驚きながら、雄一郎は身体の熱を感じた。骨が熱いと感じた。」
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読み応えあったなー、この厚さで二段組。
何故達夫の職場の説明があんなに執拗に書かれているのか、最初は理解できなかったが最後になってようやく分かった。
しかし、雄一郎が美保子のことを好きになったところが説明不足。読んでいるほうは好きになったと気づかないので、なにがなんだか分からない部分もあった。私が読み込み不足なだけか。
それと雄一郎と達夫の結びつきをもう少し丁寧に書いて欲しかった。
特に少年時代のことを。
猟奇的でもない、ごく普通の殺人事件をこんな大作に仕上げているのは圧巻。
いや、殺人にごく普通もなにもない。
しかし、普通の人が特別なことを起こす可能性は、そこらにごろごろ落ちている。
生きていると、この先どうなるかわからないと。
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内容(「BOOK」データベースより)
野田達夫、35歳。17年働き続けてきた平凡な人生に、何が起ったのか。達夫と逢引する女、佐野美保子はほんとうに亭主を刺したのか。美保子と出会った瞬間、一目惚れの地獄に落ちた刑事合田雄一郎はあてもなく街へさまよい出る。照柿の色に染まった男二人と女一人の魂の炉。
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マークスに引き続いて合田さん登場です。
マークスの時にすでに鬱屈した精神の片鱗の見えた合田さんですが、今回はその薄暗さが大爆発してます。
例によって例の如く、強烈に意識し合う関係というのがメインとなって出てくるのですが、まあとにかく暗い!陰鬱そのもの。
合田刑事側と野田達夫側の描写で交互に進んでいくんですが、二人共がその調子なのでまー暗い暗い。佐野美保子も暗い。みんな暗い。ていうか高村作品の登場人物はほとんどみんな暗い!(笑) で、弾けたときは何かが終わるとき…みたいな。
まあそんな感じの、悪くいうならダラダラした状態で下巻の途中まで話が進んでいくんですが、これがラストで見事に効いてくるんですねえ…達夫の壊れていく様が切なくて切なくて。前半と後半のスピード感に違いに見事にやられました。
読後感は悪いですよ!(笑) 何か解決するわけでもなし。それぞれ暗いものを抱えたまままた生きていくだけ…という、実生活を送る上であまり考えたくないことを実感させられるラストです。
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合田刑事シリーズ2作目。合田刑事の幼なじみ、その恋人、自殺、殺人。
くらい、ひたすら暗い。でもこの暗さがなんとも言えず不気味でうまい。工場現場のうだるような暑さと主人公の心の動きが合間って、読ませる。ドラマ化されて、恋人役の田中裕子はハマリ役だと思う。残念ながら見ていないけど。
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読了前に感想を書いてしまったが、一応読後の感想も書いておこうと思う。
読了前のものは下に残しておく。
高村薫の描く男がやっぱり好きだ。
能力はあるのに魅力もあるのにどうしようもない、どこにも行けない、救いのない男達。
どうしようもなくて堕ちていく男。
堕ちていく一歩手前の男。
そういう男を眺めわずかに救いの手を述べようとあがく男。
みんな好きだ。
結局、ダメ男が好きなのか。
それは本の中だけにとどめておきたいと切実に思う。
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まだ読み終わってないけれど、終盤まできて感じたことがあり、どうしても書き残したかったので。レビューではないけれど。
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人間社会というのは昔の歪な形の石で造られた石垣のようなものかもしれない。
それぞれの形は違うけれど凹凸をなんとか合わせて組み上がっている石垣のようなもの。
しかし、同じ形のモノは一つもなくて、中には異質なモノもあるのだろう。
その異質なモノも突出した異質さでなければ石垣の中で上手く他の石を支えられるのだろうし、組み合わせが良ければ強固な土台になるかもしれない。
けれど始めはなんとか他の石と混じって石垣となっていた異質なモノも、時間が経つにつれ他の石の重みにつぶされ、変形し、いつか崩れてしまうのかも知れない。
他の石を押しつぶしてしまうかもしれない。
周りを巻き込んで、あるいは石垣全体を巻き込んで崩壊するのかも知れない。
そんなことをふと考えた。
同時に自分はどれぐらい異質な石だろうかと思った。
それだけ。
読了後はまた違うことを感じるかもしれない。
そのときは、また新たにレビューらしきものを書いてみる。
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絶対に面白いはずだと長い間あたため続けた本
期待しすぎたか・・・
苦手な内容の割に引き込まれたのはさすが。という感じ
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暑い。熱い。そして重厚である。
執拗とまで言える各人物の描写に、前半は参りそうになったが、
中盤からの、疾走感を伴う内容に展開に圧倒される。
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刑事物語、のような、大人の恋物語、のような様々なエッセンスをちりばめた高村薫の小説。ストーリー自体を楽しむというより、2人の男性の心理描写や時系列的な描写が詳細なので、そのリアル感を楽しむという感じ。時間がないときは、めんどくさくなってしまう時もあったw
ホント、取材とか現場とかかなり準備して周到に描かれている。その人物が動いている様子が浮かび、作家でもいろいろなタイプがあるのだなぁと時々感心した。
状況的には幼少時代を共にした刑事と製造現場で働く男が15年ぶりに再会して・・・ということなのだが、刑事はすでに離婚しているし、もうひとりは浮気しまくりだし、恋愛観からすると、刹那的。女性を肉体的にみて、精神的に捕らえてない。高村薫ってたしか女性だと思うのだけど、男性の恋愛観はその程度であろうと考えているのかなぁ?
読後の感想は、なんだか照柿というのは色の種類であの柿の色のことのようだが、灰色から黒にうつる陰鬱な感じ・・・みたいな気持になった。簡単には重いなぁってことでありました
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『マークスの山』と『レディージョーカー』というベストセラーの狭間で影が薄い感のある『照柿』を再読した。
初版されたころに一度読みはじめたのだが、その内容の重さと、著者特有の引きずるような文体に馴染めず、長々と続く達夫の工場シーンあたりで断念した経緯がある。
今にして思えば、この作品のテーマともいえる『人間の業の深さ』を理解するにはまだまだ青く、あまつさえ、文章修行も未熟だった私には、些か荷が重すぎた作品だったのだろう。
当時の初版本は手放してしまい手元には無かったのだが、先日、某リサイクル書店で版を重ねたものを手に入れ、数十年振りに再読することができた。
しかし、当時の青さなどはとうに剥がれ落ち、ささやかではあるが文章修行も重ねた今の時点でも、業の深さを計りかねているのが事実である。その点を含め、著者の作品の中で最も印象深い作品に間違いない。
2006年に文庫化される際、全面改稿されたようで、著者のファンの中には単行本と読み比べる方もいらっしゃるようだが、今の私に、そこまでの気力が残っていないのが残念である。
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久しぶりに硬派な小説読んだわ。。
前々から評判が高いことは承知していましたが、読んでみたら冒頭から最後まで緊張感あふれる文章で圧倒されました。
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言葉にされないwhy done itがかくも説得力を持つのは、鬱屈とした精神の迷路を一緒にくぐってきたからで、一作目より殴られたような気がしたし、身に合った
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まるでその場にいる様な暑さや熱さが体感できる稀な小説。この全編を覆う出口なしの疲労感。高村薫は読者を甘やかしてはくれないのだ。
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前回読んだ二作も読むのに時間がかかりましたが
これは更にしんどいーーーーーーー
八王子でのホステス殺しの捜査中に轢死事件に遭遇した合田くんは
関係者に一目惚れ
その女性が18年ぶりに会った幼馴染と出来ていた・・・
誰も彼もが病んでいて精神状態が危なすぎる
それに当てられどんよりです
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暑苦しくて重い・・・。
読了するのに、相当な忍耐が必要だった。文章も無駄な描写が多く、自分には合わない。
丁寧な描写と無駄の多い描写は紙一重だと思うが、この作品は自分には×。
ストーリーも無理があるように思う。刑事が一目惚れするのは良いとしても、行動がなぁ・・・。
普通の神経ならあり得ないと思うような行動。
図書館で借りた本だから良いけど、自分で買った本でこんな内容だったら激怒してたな。
暑苦しくて疲れただけだ。