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若桑みどりの「フィレンツェ」 -2007.06.17記
RENOVATIO-ROMAE-ローマの再生-古代ローマの子としての特別な運命を自覚した都市フィレンツェ。
中世からルネサンス最盛期へと、共和国都市としてあるいは先進商業都市として、ヨーロッパを牽引しつづけたフィレンチェ。
著者若桑みどりは西洋美術史やジェンダー史を専門とし、他に「薔薇のイコロジー」や「マニエスリム芸術論」などがあるが、
本書は副題に世界の都市の物語とあるように、ルネッサンス期イタリアの花の都フィレンチェ興隆の歴史を、美術や建築の綺羅星の如き膨大な文化遺産を織り糸に絢爛としたTapestryに紡ぎあげた労作といえよう。
ダンテ、ジョット、ボッカッチョ、ブルネッレスキ、ギベルティ、ドナテッロ、ダ.ヴィンチ、ミケランジェロ、マキャヴェッリ、ラファエロたちの作品の数々を渉猟しながら、メディチ家の栄華と興亡を詳説。
440頁余に図版272を含む豊富さで、圧倒されるばかりの情報量だが、惜しむらくはモノクロだし、文庫版だけにサイズも小さくなって、なかなか此方の想像力を充分に羽ばたかせてくれないのが些か物足りなさを残すのはやむを得ないか。
とはいえ2000年の1月、一週間という束の間ながらイタリアに旅をしたこの身、フィレンチェでの滞在は1泊2日のみだったが、この折に見た絵画や彫刻、教会建築などの数々がまざまざと甦って、ずいぶんと読みの補強をしてくれたが、逆に本書ほどの予備知識をもって出立しておれば、旅の感銘もさぞ強く刻み込まれたろうにと悔やまれもする。