紙の本
美学をやる人なら
2001/02/21 22:37
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すべから - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやー、学者とはこういう人のことをいうのだろうね。美学界を代表する佐々木健一が、普通ならば弟子筋かなんかを酷使して適当にまとめ上げてつくるような「辞典」を、なんとたった一人で書き下ろしているのだからすごい。しかも、自ら序文で語っているように、権威による天下り的な説明(通常、〜といわれている、とか、〜が通説である、とか)を嫌って、まるで初学者が初めて自らの論を主張するときのように、緻密に文献を挙げ、論理を組み立てている。その精神には頭を下げるばかりである。
そのため、この「辞典」によってみずからの論を立てることが可能になるであろう。参照元の文献を当たり、自ら考えることができるようになっている。美学をやる人は、是非読んでみたい本である。
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美学会(界)の重鎮佐々木健一によって、〈美学〉〈芸術〉〈作品〉〈天才〉といった、美学上の基本的且つ重要な項目について美学史を踏まえつつ説明されたもの。
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序
凡例
Ⅰ 基礎的な諸概念
美学
美
自然美
芸術
Ⅱ 生産に関する諸概念
模倣
表現
即興
図式
想像力
天才
創造/創造性
Ⅲ 対象に関する概念
かたち
修辞的文彩
様式
象徴
作品
美的質/美的範疇
価値
Ⅳ 消費と再生産に関する諸概念
美的態度
趣味
美的判断
解釈
批評
美的体験
コミュニケーション
あとがき
参照文献表
人名/事項索引
(目次より)
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「美」「創造」「価値」「美的体験」など、美学に関した
概念を項目立てし、それぞれに定義や議論点、著者の考え
などを列記した本。辞書の体裁を取ってはいるが読み物と
しても面白かった。この前に読んだ同じ著者による「美学
への招待」に比べれば専門的でありやや難しいこともあり、
一度読んでおく本と言うよりは、美学を学ぶ物が手元に置き
折に触れ読み返す、見返す本なのだと思う。
美学については、まだ読み足りない気分が続いているので
しばらくは関連本を漁ってみたいと思う。
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美学および芸術学における25の重要概念について、それぞれ解説がなされている本です。
各項目の記述は三つの部分に分かれています。最初に、それぞれの概念の定義およびその定義を理解するうえで必要な基礎知識の説明がなされ、つづいてその概念が美学史においてどのように論じられてきたのかということが、ていねいに解説されています。最後に、著者自身の見解が示されています。
とりわけ第二の概念史的な説明が充実していることが、本書のもっとも大きなメリットであるように思います。「本書においては、わたくしが自分の意見として断定したものを除いて、思想史的な事実に関する記述には、可能な限りその典拠を注記するようにした」と著者は述べています。たとえば「表現」や「想像力」、「象徴」など、美学上の基本的な概念が、美学史のなかでどのように論じられてきたのかということを知りたいときに、本書の解説は非常に有益です。もちろん、それぞれの概念史にかんするくわしい考察は、それぞれが一冊の研究書を要するものであり、本書の説明でじゅうぶんというわけにはいかないでしょうが、すくなくともそうした関心をもつ読者にとって、本書の解説が研究の入り口を教えてくれていることはたしかであるように思います。
なお、「美学」という学問そのものの由来にかかわることではあるのでしょうが、本書の解説は、近代以降、とりわけカント美学によって切り開かれた学問的領野における概念の変遷に重点が置かれており、それ以前の哲学者・思想家たちによる美学的な考察についての紹介は、やや手薄であるように感じます。