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鬱々としていて、フラフラ本屋に入ったら、「自由価格本」のセールをやっていたので買ってきた。「従軍慰安婦」のあった事実を学ぼうというほど難しくとらえてはいないけれど、昔から、知っておくべきだろうということは考えていた。慰安婦だとか、娼婦だとか――、男の人の心はあまり動かさない問題なのかもしれない。こういう問題に少しでも目がいくということは、やっぱり私も女なのだ。
この本は、戦前から私娼を生業とし、その後半分騙されたようなかたちだが、「自ら」従軍し、慰安婦となった女性の口述証言をもとにまとめられている。
貧しさの口減らしに、或いは借金のかたに、親に異を唱えるまでもなく娼館に売られていった娘たち。処女のまま上手い話に騙されて連れてこられ、「娯楽所営業初日」に「アイゴー、アイゴー」と叫び声をあげた朝鮮人の少女。
いずれにせよ、恋も愛も知らぬまま、身体に無数の孔を開けられ続ける。
これから死地へと向かう男たちは、女に最後の性欲の処理をもとめ、死地から帰還した者は、今まで誰からも「愛されることのなかった」慰安婦の性器にくちづけ、乳房を吸う。
生きている証のために。
先週の『金スマ』を見ていたら、ヒモを生業としている青年に、おじいちゃんがわが孫のことのように涙を流しながら、愛のあるお説教をしていた。こんな優しいおじいちゃんの同世代だろう、「慰安婦」を作ったのも、「慰安婦」で性を満たしたのも。
戦争って怖くて、哀しい。(2002/05/11)
■戦争、女性、このふたつが、私が小説以外の本を探すときの主要テーマであることは今も昔も変わりがない。私が強くいたいのは、弱いことを忘れたいからだ。無意識に腕を欲し、封じ込めたくなるのは、その腕に凶暴性が潜んではいないことを確認したいから、に違いない。