紙の本
懐かしい感傷としてのポルノ
2002/06/24 02:36
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投稿者:あおい - この投稿者のレビュー一覧を見る
『フリスク』を除いて、デニスの作品には頂点といえるような昂揚が存在しない。そこにあるのは昏い欲望の持続で、心理から離れ、描写すら枯渇した叙述が、けれどふらふらに疲労し凝縮した詩情を湛え交叉する文体の構造を、美とも愛とも無縁な、ポルノという形象を作品に与えている。これは確かに文体の問題なのだ。この作品集にはその作品の背後にある空虚がとてもメロウに投げ出されていて瑞々しささえ感じられる。バロウズが死を鎮痛剤にたとえ、アッカーが癌を前にしてカルトに溺れたように、過激さはセンチメンタリズムの一形態である。それはどこか苦い悔恨をはらんでいつもとても懐かしい。
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ロックバンド少年の話がせつなくてロマンチックでキュート☆☆☆
少年達を犯して切り刻んで殺した男。
虫の息の、あるいは息絶えてしまった彼らにマスクを被せ、
彼らの瞼や唇を局部的に凝視し、
平凡な容姿の少年から美しさを見出そうと、自分の憧れのイコンにすげ替えようと、目を凝らす。
・・・幼い頃、目を眇めて、おもちゃや粘土や自分の身体を見つめていると、
それは自分自身が見たい物に姿を変えた。美しい化け物に。その感覚と同じ。
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邦題が上手すぎます。
この本のタイトルを見ただけで
借りて読みたい!!衝動に
駆られてしまいました。
だけど、やっぱり
この作家は好きです。
善人面をした野郎にツバを吐け!
という感じです。
というような、大まかな感想です。
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「愛は、殺らなきゃ解らない」「正常であることの異常、異常であることの正常」(帯より)。
個人的に……あまりこういうことは言いたくないけれど、頭に入ってこない文章で、『異様』位しかきちんと内容を覚えていない、読み終わったばかりだというのに。殺人、性、薬……など過激すぎてファンタジーかと思うほどのことが頻出、寧ろそればかり書いてあるというのに、ものすごく空虚で退屈だ。事後、昔を振り返るような遠い感じ。
しかし、外国文学は本当に読めないな……日本と言い回しとか根本的に違うから訳すと“日本の文”として不自然だし、けれど訳さないと読めないし。うーん。
この本で感嘆したのは何と言っても訳者の浜野アキオさんのあとがき。さすが訳者、こんなに理解してわかろうとしてるんだ、すごい!と思ってしまった。新しい読み方を教えられた。「愛情とセックスと殺戮とを等号でつないでいくこの欲望」……。これとは別にも、ちょっとした一文がすごいなあと感じるあとがきだ、本当に。「誰もがちょっとずつマイナーであり、ちょっとずつヘンタイ」