投稿元:
レビューを見る
最初は面白いかなと思って読み進めていたのだけれど、何だか次第に論旨が不鮮明というか、筋が粗っぽくなってしまった感あり。
まぁ当方にケルトの知識が無いが故という気がしなくもない、何せケルト=スコットランド方面みたいな一方的・断片的理解しかありませんから。
それにしても縄文時代の代物とよく似ているなぁ、まさに土着っていう感じ。地域・時代を超えた普遍性みたいなものがあるんですかな。
投稿元:
レビューを見る
ヘレニズムとヘブライイムズを中核とするヨーロッパ精神の古層にあったケルト美術の「抽象」性とそこに示される思考様式について、簡潔に紹介している本です。
本書における著者の議論の下敷きになっているのは、ヴォリンガーの『抽象と感情移入』における北方ヨーロッパの美術様式のとらえかたです。ヴォリンガーは、具象美術を評価する地中海世界の古典美術とは異なる美術様式を北方ヨーロッパの美術に見いだし、「人像中心主義」から離れて動物や自然の奥から見えてくる「不可視的世界の創造的構成」がなされていると論じました。著者はこうしたヴォリンガーの見方を受けて、「存在」にはかたちや外観などなく、つねに「変容」のなかにあるほかないという観念を、ケルト美術の渦巻き模様や曲線のかぎりない分岐のうちに見ようとしています。
ケルト美術をヨーロッパの「内なる他者」とみなす枠組みにもとづくケルト美術の概説書として、おもしろく読むことができました。
投稿元:
レビューを見る
〈ケルト〉はアイルランドだけではない。かつてヨーロッパに広く分布していたケルト文化だが、ギリシャ・ローマを中心に据える史観によって周縁としてしか語られてこなかった。しかし、紀元前700年ごろからヨーロッパの東西を横断して拡大していたケルト人の文化を知ることも、ヨーロッパの始原に迫ることになるはずだ。本書は美術品のデザインを中心に〈大陸のケルト〉と〈島のケルト〉を眺め、ヨーロッパの思想・文明の読み直しを試みる。
〈修道女フィデルマシリーズ〉と一緒に購入。並行して読んでいたら、ケルト戦士に敵の首を狩ることへの執着があることや、最重要アクセサリーである首飾りの「トルク」など、小説にでてくる文化の補足情報が得られてとても嬉しかった。
ケルトとローマの価値観の違いはフィデルマシリーズでもよく議題になるが、本書では「反・人像主義」と「神人同型主義」の対立として説明されている。人間を中心に据えるギリシャ・ローマがリアリズム表現を追求して遠近法を発明したのに対して、ケルトでは鳥や獅子などと同格の表現で人間までもが組紐模様にされていく。「ケルズの書」を見ればキリストさえその例外ではないとわかるのが痛快だ。だが、限りなく人間から程遠い姿に描かれたキリストは、今見てもふしぎな神性を纏っている。
金細工を基準として彫刻や絵画を発展させていったケルト美術は、常に細部の装飾に飽くなき情熱を燃やす。北方ルネサンス絵画にトリビアリズムは大陸ケルト(ガリア)文化のなごりである。18世紀ロマン主義の古代幻想に応えるように大陸でケルトの遺跡が見つかると、ケルト文化再興の機運は高まり、アイルランドの独立へ歴史は動いていった。18世紀ケルト幻想のきっかけとなったマクファーソンの「オシアン」、由良先生の本などでもちょいちょいでてきたが読んだほうがいいのだろうか。この"偽書"の成り立ちと受容もかなり面白そう。