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「目ざめて臥床から起き出でようとする刹那に」という調子の文体が素敵です。ちゃんと読もうとすると時間がかかるタイプの本。
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類体論で知られる近代日本初の国際的数学者である高木貞治(1875-1960)による、数学史に関する一般向けエッセイ。18世紀末から19世紀前半のドイツとフランスを中心とする数学界、取り分け当時幾人かの天才によって展開されつつあった整数論や方程式論の話題を中心に取り上げる。主役の数学者はガウス・コーシー・アーベル・ガロア・ディリクレ。更にラグランジュ・ラプラス・ルジャンドル・フーリエ・ヤコービらが脇を固める。
中高生の頃、自分もこうした天才たちの物語に胸を躍らせていた数学徒であった。しかしその憧れはディレッタントの羨望のまま大成されずに終わり、今は随分と違った方面に向かってしまっている。まだ自己の虚無と世界の広漠に戦かずにいられた暢気な幸福時代を思い出しながら読んだ。
"ガウスが進んだ道は即ち数学の進む道である。その道は帰納的である。特殊から一般へ!それが標語である。・・・数学が演繹的であるというが、それは既成数学の修業にのみ通用するのである。・・・しかし論理は当り前なのだから、演繹のみから新しい物は何も出て来ないのが当り前であろう。もしも学問が演繹のみにたよるならば、その学問は小さな環の上を永遠に週期的に廻転する外はないであろう。"
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「史談」のところは面白く読めるけれど、ところどころの難しそうな数式は飛ばしました。主人公格はガウスとアーベルで、それぞれの書簡の中での第一人称は「余」と「僕」。なので多分、訳は高木先生自身がつけたものなのだろう。22章にそれを裏付けるような部分があるし。書簡だけじゃなく、ほんとにいろんな人のいろんな記述が引用されてるのだけど、この人にこういう面があることは知らなかった。いやもともと、日本人数学者については全然知らないんだけど。以下、雑多なnotes。p.56に出てくるWolframというのは、Mathematicaをつくった彼のご先祖なんだろうか?"「ガウス流の厳格主義!そんな暇があるものか」とヤコービは言うたとやら."(p.63) ヤコービよ、よく言った! 言うたとやら、っていうのはp.151にも出てくる。"ガウスが進んだ道は即ち数学の進む道である.その道は帰納的である.特殊から一般へ!それが標語である.それは凡ての実質的なる学問において必要なる条件でなければならない.(中略)若しも学問が演繹のみにたよるならば,その学問は小さな環の上を永遠に週期的に廻転する外ないであろう.我々は空虚なる一般論に捉われないで,帰納の一途に精進すべきではあるまいか."(p.68)エコールポリテクニクの入試は満点200で、この本が書かれた時点での最高記録は1875点。"保持するのは誰あろう数学者Hadamard氏であると言う.”コーシー-アダマールの定理の人だ(どんなのだか忘れたけど)。ドレフュスの義弟だとか。ちなみにガロワは、"「あまりに馬鹿気た問題だから,答案を書く気になれなかった」"そう。(p.75)p.137にでてくるオーム氏は”有名なる物理学者の同胞”とあるからオームの法則の人の兄弟なんだろうが扱いがかわいそう。”無能なくせに先輩ぶって,クレルレ邸に会する青年から嫌悪されたベルリン大学のO.など問題になるまい.”こういうように著者の人物評にはなかなか手厳しいものがある。解説にあるけど、ルジャンドルもその犠牲者のひとり。物理ではめっちゃ名前聞くのに!ヤコービ曰く、”『フーリエ氏などは数学の目的は社会的効益及び自然現象の説明にあると言うが,氏の如き哲人はすべからく学問の唯一の目標は人間の精神力の発揚(l'honeur de l'esprit humain)にあることを知るべきである.この見地に於ては,数の問題も宇宙系統の問題も同等の価値を有するのである』(1830年)”。もちろんヤコービには同意だけど、純粋数学者だと思ってたフーリエが応用重視だったというのは意外。面白いのでたくさん引用してしまったけど、著作権は切れてるはず、と思いきや、来年までだったか。数学者の伝記はやっぱ面白い。ベル、再開しようかなあ。解説は杉浦光夫。◆◇関連リンク◇◆ベル『数学をつくった人びと I』http://review.webdoku.jp/note/4390/15216/1?id=120238
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以前、数学専攻の雪江先生に、
「数学が苦手な人にもオススメの本があれば…」と質問して紹介していただいたのがこの本でした。
その時、雪江先生よりいただいたコメント
「ずっと後で読んだ本なのですが、これは面白いですね。歴史本でもありますが、数学の部分もあるのでそこは難しいかもしれませんね。この本は絶版していたんですが、最近復刊されました。」
そのときのインタビューの全貌はこちらから
↓
雪江明彦教授
2009年度日本数学会「代数学賞」受賞記念インタビュー
http://www.sci.tohoku.ac.jp/mediaoffice/second/interview3.html
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数学において最も発展を遂げた時代とはすなわち19世紀であり、それは自然科学の興隆の呼び水になると同時に20世紀初頭における数学の危機を呼び起こす前兆となった。『解析概論』という教科書の名著で有名な著者がそうした発展の立役者であるガウスやコーシー、ガロアといった数学の天才たちの人となりや業績について味のある古風な語り口で記している。如何せん数式の部分はさっぱり理解できないのが門外漢にとっての辛いところだが、数学者とはある種人間のリミッターを外したものばかりで、その生涯についてのエピソードだけでも楽しめる。
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[ 内容 ]
世界的数学者、類体論の高木貞治(1875‐1960)が独特の語り口で、ガウス、アーベル、ガロアらの発見を語る。
巨人たちを輩出した近世数学の勃興期―フランス革命後19世紀前半までの数学史を論じて数多くの数学少年の夢を育てた本書は、そのロマンティックな時代の空気までも伝えて読む者を倦ませない。
[ 目次 ]
正十七角形のセンセーション
近世数学の発端
ガウス略歴
研究と発表
ガウス文書
レムニスケート函数の発見
数字計算とガウス
書かれなかった楕円函数論
パリ工芸学校
三つのL〔ほか〕
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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解説で著者が戦前の時代に世界的に認められたすごい数学者だと知る。オイラーは近世以前ということで、ガウスやアーベルがメイン
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図書館で借りた。
高木貞治氏が記した、ガウスをはじめとした近世の数学史の読み物。同時代に著名な数学者が何人も居たのだというのがこの本の興味深いポイント。
最近だと、「数学史の研究者」というジャンルがありそうだが、著名な数学者が、数学史を独自の語り口で語る、というのは貴重でかつ面白いのかもしれないと感じます。
貴重な数学史の1冊と思いました。