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紙の本
彼女の透明で微かに震える伽藍
2001/02/15 02:32
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投稿者:あきら - この投稿者のレビュー一覧を見る
歌人という存在を知っているだろうか。平安時代の貴族たちのたしなみだった和歌は現代短歌として生まれ変わった。現代短歌の起点をどこに置くかという問題にはいろいろ説はあるだろうが、塚本邦雄、寺山修司、岡井隆、春日井建らの前衛短歌運動は、それまでの和歌=短歌を大きく転換させた。
著者水原紫苑は彼らの後を受け、今最も注目すべき若い歌人の一人である。この本は歌人である彼女の散文集であり、歌人論と能や歌舞伎などの古典芸能に関するエッセイと言う形をとるが、この一冊が彼女の内部世界への扉へとなっている。
三島由紀夫や釈迢空、定家といった死者と、馬場あき子や安永蕗子といった生者たちとの両方を等しく眺め、また彼女の世界の中では「もの」はその存在感をます。ものは人間と同じほど彼女に雄弁に語りかけ、彼女はそれを読者に伝える。
針と針すれちがふとき幽かなるためらひありて時計のたましひ
ものとひと、生者と死者の存在が等しい夢幻の世界。そして語り口はやわらかで散文であるにもかかわらず、そこには歌が響いている。想像力と歌により、時間と空間を軽がると飛び越えてゆく、彼女の透明で微かに震える伽藍に触れてみてはいかがだろうか。
殺してもしづかに堪ふる石たちの中へ中へと秋蜻蛉ゆけ
そこではこのような非現実と思えるできごとも普通に起こってしまうのだから。巻末には彼女自身の手になる短歌二百首も収められており、現代短歌はいまどこにいるのか、どのようなことばで世界を歌っているのかを知りたい人にも格好の入門書となるであろう。
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