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「僕の家には、いつも誰かしら他人がいた。
これは他人だとか、こっちは家族だとか、いちいちわけて考えることもしなくなるくらいに。
亜郎の家にも、部屋係の人や板前さんや、いろんな人たちがいるだろう。
「おやじがいておふくろがいてきょうだいがいて――家族だけしかいない家って、どんな感じなんだろうな」
「さあ……よくわかんない」
"「きみはなんでも自分ひとりで抱えこむタイプでしょう? 違いますか?」
・・・・・・
「どういうことですか?」
「そうですね…うれしいこととか、不満なこととか、腹がたつこととか、そんな大きな感情じゃなくても、おもしろいと思ったときには笑うとか……。
そう、もっと簡単なことがありました。
気分が悪いときにはそう言う。
殴られた時には痛いと言う。
君はたぶん言わないでしょう? 今だって、痛いとか苦しいとか、ひとことも言わない」
「それは……」
そうかもしれないけれど。
なぜ僕は言わないんだろうとか……もっと端的には、なぜ言う必要があるんだろうということ……それが僕にはさっぱりわからなかった」」