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明治36(1903)年の刊行。
人間と自然との関係を定性的に記述している。思考法がアクチュアルで、軍事、文明、宗教、気性についての記述が優れているのではないか。
国体、大和民族に言及した部分など時代の制約を感じるが、例えば日本についても単なる宣揚ではなく、その欠点も挙げ、全体的にはバランスが取れている。
時代を考えれば、驚くほど偏見に陥ることなく、断定的な物の言い方を避けている。世界はおろか宇宙を取り上げ、視野も広い。
1巻は、「人生地理学」という学問、書の題名の解題から始まって、郷土の重要性を説き、各論に入っていく。
この時期には日蓮に帰依していなかった牧口だが、日蓮への記述に加えて、様々な内外の宗教家への言及が敬意をもって行われているのに好感を抱いた。
・「吾人は郷土を産褥として生まれ、かつ育ち、日本帝国をわが家として住し、世界万国を隣家として交り、協同し競争し、和合し衝突し、もってこの世を過しつつあるものなることを自覚する」「その起発点としての郷土観察が、公平に世界を達観する上において、はた正当に各自生活の立脚点を自覚する上において、欠くべからざる」
・郷土とはなんぞや。その範囲は観る人の立脚地により異なる。居室→村→県→国→現世。
・「慈愛、好意、友誼、親切、真摯、質朴等の高尚なる心情の涵養は、郷里を外にして容易にうべからざことや」
・吉田松陰「地を離れて人無く、人を離れて事無し。人事を論ぜんと欲せば、まず地理を審らかにせざるべからず」
・宗教的交渉:吾人は他の一切の万物とともに、整然たる秩序が存在。吾人の勢力は微弱なり。畏怖と敬虔とは胸中に溢れ集まる。
・「島民は鞏固なる愛国心、愛郷心に富み、一朝外患の迫るにあたっては、一致団結その身を君国に捧ぐるの概あり。」
【目次】
緒論
一 地と人との関係の概観
二 観察の基点としての郷土
三 いかに周囲を観察すべきか
第一編 人類の生活処としての地
第一章 日月および星
一 日光と人生
二 温熱と人生
三 太陽と精神的人生
四 日本人と太陽
五 太陰ならびに星と人生
第二章 地球
一 地球の形状と人生
二 地球の大きさと人生
三 地球の運動と人生
四 地球の部分と人生
五 水界および陸界
第三章 島嶼
一 島国の特質
二 島の種類と人生
三 貿易上および国防上における島
四 島と英雄および罪人
五 開明時代における島
第四章 半島および岬角
一 半島の特質および成因
二 半島と文明
三 半島の配置ならびに運命
四 半島の利用
五 岬角と人生
第五章 地峡
一 地峡の種類ならびに地峡と人生
二 地頸に対する近世の努力
第六章 山岳および渓谷
一 山の高度と人生
二 山の各部と人生
三 山の集合と人生
四 山脈の方向と人生
五 山脈の成因と人生
六 火山と人生
七 渓谷と人生
八 約論
九���開明人に対する山
第七章 平原
一 平原と人生
二 平原の区別
三 高原と人生
四 河谷低原と人生
五 海浜低原と人生
六 各種平原の分布