紙の本
このアイディアの奇妙さ,見事さには正直脱帽
2005/03/25 06:33
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投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈地球市〉と呼ばれる世界に生まれた主人公ヘルワードは,成人にあたる650マイルの歳を迎えて都市を管理する「ギルド」の見習員となる。その誓いを胸に,初めて見た外の世界は,託児所で教えられたものとは似ても似つかないものだった……。
全長1,500フィート,七層からなる要塞のような外観の都市が,その行く手にレールを敷設しながら年に36.5マイルずつ進む。月も太陽もいびつに歪み,行く手と来し方に地面は競り上がっている。原因は不明だが都市では女子の出生率が異常に低いため,通過する周囲の村々から女性を「借り」て,子供を産んでもらう……。いや参った。このアイディアの奇妙さ,見事さには正直脱帽である。
しかも,その素晴らしいアイディアだけに寄りかからず,なんでここがこんな世界なのかという謎をベースにおきながらも主人公ヘルワードの成長と苦悩,葛藤をキチンと描いて小説としても一級品に仕上がっている。傑作であります。加藤直之さんのカヴァー絵も吉。
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とりあえず表紙買いをしてしまった本。でも中身も最高でした。
これぞ設定の勝利。
軌道の上を走る移動式巨大都市、都市は一定の距離を一定の時間で進もうとするため年齢は距離で表され、都市の行く先は「未来」、都市が辿ってきたのは「過去」である……
これはもうヤバイね。
逆転世界というタイトル通り、様々に逆転の設定がちりばめられています。
巨大構造物好きはぜひ。
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「トマトは赤い」という当たり前のことを疑問に思う方にお勧め。わたしの「赤」はあなたの「青」かもしれません。つまり、現実なんてそんなものです。
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1975年の英国SF協会賞受賞作。と、言うことで、結構古い作品です。
確かにゆったりとしたテンポで物語は進むので、物足りない感じもします。
ですが、一体何なんだろう?と、言う疑問が常に付きまといます。
ラストになって、『え〜!そうくるの?』と、いう驚愕を味わうための作品です。
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地球市と呼ばれる可動式の都市に住む主人公が、ギルドの一員となり、都市を動かす仕事に従事するうちに、都市が動く仕組み、都市の外の世界を少しずつ理解していく…。
ネタバレになるので、細かいことは書きたくないけど、まさに異次元ワールドに迷い込み、プリーストの特異な世界に頭がクラクラした。
文庫本を手に取ると、長い話に思えそうだけど、あっという間に引きずり込まれ、あっという間に読了。
これを読んで思い出したのが、三崎亜記さんの街シリーズだったりしたけど、三崎さんの視点が日本限定だとしたら、プリーストは世界を支配した大英帝国的だと思った。
この二人を比較するのはどうかと思うけど、なんとなく国民性を感じた。
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中盤あたりからはスラスラと読めた。
ただエンディングは・・・ん?って感じ。
もうちょっと何かがあれば★4だった。
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とてもおもしろかった!
主人公のヘルワードには好感がもてた。
最後の方だけ「?」で、戻って何回か読みなおしてしまった。
今もなんだかん~・・・って感じだからそこだけマイナス☆。
でも読んで後悔しない作品だったと思う。
登場人物たちもみんな魅力的な人物ばかり。
SF好きな方たちにはおすすめです。
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最初はどこかの異世界の設定と思いながら読み進みましたが、最後のどんでん返しには唸りました!これぞSF小説の醍醐味ですね。「猿の惑星」を連想させるような最後ですが、人間の知覚って本当にどこまで信用できるものなのか、改めて考えさせられます。今は遠く海外の異国で単身駐在の身のため、日本と海外との二重生活で、たまにどちらが本来の生活なのか錯覚に陥る時があります。そんな生活の中で読んだため、少々自分の境遇にも重ね合わせてしまいました。
構成も部が変わるごとに主観となる人物、書き方が変わり、最後に収束するまで飽きさせません。あまり聞いたことがない題名ですが、文句なしのSF小説の逸品ですね。邦題が今一つなのでしょうか。
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本書は1974年にイギリスで出版されたInverted Worldの邦訳。クリストファー・プリーストの初期の代表作だ。現在は純文学とSFの間を浮揚する幻想文学といった趣の小説を多数発表しているが、本書はガチガチのSF。でも驚くべきアイディアで読む者の認識に変容を迫る、という点では現在の作風と通じる。
主人公のヘルワード・マンは<地球市>と呼ばれる移動都市で生まれ育った。地球市は年に36.5マイルずつレールの上を移動しており、マンは650マイルの歳になり成人を迎えた。「未来測量ギルド」に配属され仕事を始めたマンは、初めて都市の外へ出て世界を目撃する。その目に映ったのはいびつな形の太陽など歪んだ光景だった。異様な世界に戸惑うマン。やがてマンは世界と地球市の秘密に直面していく。
SF者なら設定を聞いただけでもワクワクしてくるだろう。謎に満ちた世界を読者はマンと同じ視点で冒険していく。地球市とは何なのか、なぜ地球市はレールの上を延々と移動しているのか、外の世界はなぜ歪んでいるのか。数々の謎が明かされるラストは驚愕度十分だ。
本書は1983年にサンリオSF文庫で刊行され、1996年に創元SF文庫から再刊されたものだ。再刊に際して1979年版の原書改訂版を参考にしたため、冒頭にあった短いプロローグがなくなっているそうだ。
ちなみに本書(創元SF版)の表紙は加藤直之氏のイラストが使用されており、地球市の重厚な外見が圧倒的な存在感を見せているが、サンリオSF版の表紙には太った裸の女の後ろ姿が魚眼レンズのような歪んだ視点で描かれていた。これは本書の1シーンなのだが、異様な作品世界を視覚的に効果的に描き出している。
終盤、タイトルの真の意味が読者に明かされる。これまで信じていた世界自体が逆転してしまう。ある種絶望的なラストではあるが、もはやこの物語と出会う前と同じようには世界を見ることは出来ないだろう。
認識の変容、それこそがSFの醍醐味だ。最後の一行を読み終えた後、世界の見方が変わる。そんな体験をぜひ味わってほしい。
鬼才プリーストの才気に満ちたSF小説である。
世界を疑え、自分の認識を疑え。
邦訳は、日本人にはなじみのうすいマイル法による表記がわかりにくいのが残念な点か。まあ仕方ないとは思うけど。
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結末がちょっとお粗末かなと思いますが、途中は本当に先を読みたくてかなり熱中しました。この設定の中での人生をと思うと考えさせられますね。
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アイデア勝ち。
主人公の立ち位置が変化するにつけ明らかにされていく世界観は、趣向が凝ったものであったが、最後は尻すぼみ。
惜しい。
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SF世界観の異質が強烈なインパクト、しかし物語の展開としてはややバランスに欠ける感。
1970年代作なのですね
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大どんでん返しが魅力の作品だが、借りた本が古くて、字が小さく読みにくかったことからか、あまり乗れずに流し読み。
アイデアはとても魅力的だから、いつか再読したい作品だ。多少テンポが遅いため、時間があるときがいいな。
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思いもかけなかった真相に驚かされた。
…けど、結局ヘルワードはどうなったのか。
都市の影響を受けすぎて知覚が元に戻らないってことなのかな?
山々が小さくなって体の下を流れていく―という描写が印象的だったので、
オチを丸ごと信じづらい感じ。
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ファンタジーのような異世界が現実世界の変容であったと種明かしされるまでの驚くべきSFマインドが秀逸。ただしクライマックスの描写はちょっとした想像力が必要。著者の「ドリーム・マシン」に次いで好きな作品。