紙の本
絶望の痛み
2002/07/05 04:13
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投稿者:あおい - この投稿者のレビュー一覧を見る
鈴木いずみの小説は、いつでもとても切なくて、そしてとても痛い。代表作とも云えるこの長編小説は、「虚無」に恋いこがれながら「絶望」に生きた当時の感受性鋭い若者たちを、その真っ直中で生きた著者の感覚そのままに描かれた陰惨な青春小説だが、松浦理英子が正しく指摘するように、その風俗的な側面の抽象化がふじゅうぶんで、心理描写があまりにも客観視されていない思い入れの強さによって、小説になり損ねてしまったように思えるのだが、しかし、それゆえにこそ当時の絶望感の深さが、ラスト・シーンに横溢する「静寂」への激しい渇望として胸に迫る。
その意味で、この小説はむしろ鈴木いずみの作品としては「文学」として読むことも出来るように思う。僕としては彼女が最盛期に書いた(書き散らしたとも云える)ポルノ小説やSF小説の復刊を希望したい。それらの作品のビニール袋につつまれたような「軽薄さ」にこそ、本当の絶望の「痛さ」が隠されているからだ。
紙の本
時代を切り取ったせつない長編作品
2002/07/08 01:41
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投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
60年代を引きずったままの70年代という一瞬の時を封じ込めた絶望的青春を描いた自伝的長編作。「ぎんざNOW」などと出てこられると一気に時代を感じてしまうが、それ以外の部分では口語体で書かれているにも関わらずまったく古臭さを感じず読みやすかった。自由奔放な独身時代から、夫と出会い縛り付けられる圧倒的な閉塞感、そして夫の死後…疾走する青春が切なくて痛い。
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阿部薫と鈴木いづみの話。
固有名詞がたくさん出てきて、生命力の強い岡崎京子のようだ。これは褒め言葉。何度も読み返すのはこの本。もっとスパンッって思ってもいいのにっておもう。
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愛し合うことに疑問と納得を。
冷静に狂うということは、たぶんこういう事なんだろう。
古くならない本の中の一冊だ。
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女性作家はあまり読んでないのだけど、鈴木いづみは読むたびに新しい気持ちが生まれるような気がする。考え方が、似ていると思う。
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06/12/30完読 fromゆき。
なんていう廃れた感情の持ち主なんだろうか。そしてその感じがとても貸してくれた永田にリンクする。ものすごいたくさん名言があったから引用しておこうと思う。
あとで更新!!
ていうか、こんな女怖い!
自分の周りにいてほしくない!(いるけど!)
自分どう見られてるんだろう?
きっとどうしようもなく女として落第点だとか思われてるのだろう!
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36歳のとき、首吊り自殺にて死去した鈴木いづみが、最後に書いた長編小説。
小説だけれども、ほぼ自伝に近い。
結婚前の派手でかつ怠惰な生活。
そして結婚後の狂気。
狂気が去った後のつめたい静けさ。
それが一冊の物語に詰まっている。
正直に言うと、物語としては、決して面白いとは言えません。
だけどこの小説は、面白さを求めて読むものではない。
ともすれば、気持ちの悪さまで感じてしまう、静かな狂気や、人間の凄まじさが表されてる。
特に、ジュン(実際は夫の阿部薫)との結婚生活の章は、本当にすごい。
ジュンの異常なまでの愛情や、執着心を、主人公のいづみは愛してなんていなかった。
だけどジュンが死んだあとも、ジュンに追いかけられているような気がする。愛していなかったのに。
それほどまでに、ジュンの愛情や負の力が凄まじかったということだと思う。
そして、いづみが本当に愛したと言える、ジョエル。彼も実在している人物のようです。
彼らすべてを知る人が読んだら、また見方が違うのかも知れない。
ジュンの激しさと、ジョエルの諦めにみちた雰囲気の対比。
どちらに愛されるのが幸せなのかは、分からないけれど。
物語というよりも、人間の激しい内面や、哲学にみちた文章を読む小説でした。
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過去に読んだ本。
芸術家肌の男性を旦那にすると、本当に大変なんだなー。
やっぱり、結婚ておっかないや。
だからと言って結婚しないわけじゃないけど。
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松丸本舗で「僕はすずきいづみに恋してる」ってポップがあって、つい買っちゃった。
扱ってる時代の雰囲気がわからないせいか、読み切って特別な感情は特にわいてこなかった。
ジュンとの結婚、その後の展開がすごくいい。お互いの会話や描写がとてもリアルで、こういう会話するとこんな気持ちになるなーと共感する。
こうやって、人やクスリに溺れて生きても、ちゃんと友達もいて結婚もできちゃって子供ができて。
自分の中でタブーだと思ってたことが意外とそうでもないんだなーって思えるのがすごくいい。
みんなシリアスにものを考えすぎる。自分は特に。もっと自堕落というか、生々しく生きたい。
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ごくたまに出会う、「この人もしかして自分かな」と錯覚するような人だった。乾いてて投げやり、排他的だけど肯定的。
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もぅ何度目だろう。読み返したの…。
気付けば彼女の年齢を超えてしまっていた。
会話中心の展開が好きだ。ネットも携帯もない時代。面と向かった相手とどんな感情、どんなシチュエーションで、どんな会話を交わすか。
そして、今回も感じる。おそらく、今の自分でも、まだ彼女の「スピード」についていけないだろう…と…。
そして、自分はコレを棺桶まで持って行くことだろう。
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2015年47冊目は鈴木いずみの自伝的長編。
彼女の23歳からの約10年が断続的(続断的と言った方が正しい感もあるが)に綴られている。
ルイジアナ(リーダーのボーカル&ベースは「よろしくッ!」と挨拶する)。グリーングラス(ベースのジョエルはハーフ、ギターのランディーは中国系のGS後期、横浜本牧出身グループ)。ブルースシンガーのアイ。そして、アルトサックスプレーヤーのジュン。この辺りは実名は伏せてあるが、容易にモデルはわかってしまう。
この一冊、もぅ軽く5回以上は読み返しているだろう。しかし、何度読み返しても、彼女の言葉のチョイスは、直感、直情的でありながら、実にフレッシュだ。並の頭の回転速度では、追いつけはしない。
今回は多数の引用を登録しました。しかし、この二つはレビュー用にしておきました。この一冊は『青春がいかにしておわったか、を語っている。(276p)』そして、『生きてみなければわからないことがある。わかってしまったあとでは、もうおそいのだ。(中略)この不条理を、とりあえずわたしは受けいれている。ジョエルもそうだ。受けいれられなかったジュンは、死んでしまった。彼は人生に、時間に、力いっぱいたてついたのだ。(276~277p)』と記した彼女もその数年後 ……。彼女のハートについた火はあまりに激しかった。そして、残った熾火でも生きるには困難な、のっぺりとした時代になってしまったんだろう。
ただ今は、彼女の魂が安らかで、薬に頼ることなく、ぐっすりと眠れているコトを祈ります。
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ハートに火をつけて!誰が消す
読み終わった。
やっぱり鈴木いづみ好きだなあ。
60年代という時代は想像するしかないし、鈴木いづみという人物は未だに理解出来ない。でも文章に引き込まれる。
物事を完全に理解したとして、その先に面白さなんてあるのか?なんて考えなので、これでいいやと思う。
私のジョエルはどこだ