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読始:2009,3,12
読了:2009,3,13
特に何かが感動的というわけでもないのに流産のくだりでは思わず涙が出そうになった
強[つよ]い心と強[こわ]い心は違うのだ。
この小説で最も印象に残った一節の一つ。
心に傷をつくって、その傷口をふさぐことだけに腐心すれば、心はたぶん強[こわ]くなる。
物語の核心をつく一節なら
「あなたはあたしのクリスマス・ツリーだったのよ」
がくるだろう。恋愛に至る過程や恋愛中の幸福感を描くのではなく別れの切なさを描いた作品といえようか
巻末解説を俵万智さんが書かれているが、読んでて私も同じことを感じた
どんな風に愛するかより、どんな風に別れるかというところに、その人の性格というか本質が出る
うーん、至言だ…
この小説、山場があるわけではない
だがじんわりと心に残るものがある
鷺沢さん4作品目にして初ヒットな感じ
読後のなんともいえない雰囲気?がたまらない
★4
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ホワイト・ハウスの前の半円形をした芝生の敷地に、それほど高くはないもこっとした木がたった一本、
植えられている。それが、大統領のクリスマスツリーである。
この小説は、「大統領のクリスマスツリー」をキーワードに、香子と治貴の回想物語が展開される。
回想されるのは、アメリカで出会い、愛しあった香子と治貴との恋愛。
アメリカで出会い、恋に落ちた香子と治貴はアメリカの地で一緒に暮らし始め、結婚し、子供を授かって
幸せに暮らしていた。アメリカ人でも難関の司法試験に合格し、弁護士事務所で働く治貴と、そんな夫を
支える暮らしに没頭する香子。ふたりはお互いの夢を次々に叶えていき、「こんな幸せあっていいのだ
ろうか」とさえ思うほどの順調な生活を送っていたはずだった。
どこでどう歯車が狂いはじめたのかなんて、誰にもわかりはしない。ほんの些細な事で人生なんていうも
のは一転するものだ。それを運命というのかも知れないし、そうなるべくしてそうなったのかもしれな
い。つまり、この恋愛物語は一組のカップルが終焉に向かうまでの道のりを記した失恋小説でもある。
鷺沢氏の作品は、まだまだ全部とまではいかないけれど、けっこう読んだほうであると思う。
その世界観と文章力の高さには読むたびに感動すら覚えたものだが、この【大統領のクリスマスツリー】
は、どうしてかあまり読後感に冴えがなかった。大人の恋愛の切なさとかやるせなさとか、結婚後の家庭
生活の実情とか、僕もいい歳なのでその辺りのことは知っているつもりだったけれど、それらを経て、
この物語のこの別れの形というのはどうしても釈然としないのはどうしてなんだろう。
個人的な意見になるけれど、あまりにも完璧な男だった治貴(優しくて、ユーモアがあって、行動力が
あって、紳士的で)が、別れを選んだ理由に納得がいかなかったのだと思う。
お前ほどの男がそんな理由で家庭を捨てるの?あれほど愛してやまなかった妻と娘を捨てるの?
という感想しか残らないのが残念。
夢を必死で追いかけて、幾多の困難を乗り越えて、愛を育んで幸せを手にいれた過程がとても素敵な物語
だっただけに、もっとドラマチックに終焉に向かって欲しかったな。
物語の中に色々な伏線があって、よくよく読み込めばなるべくして向かえた終焉なのだと納得できるの
だろうけど、そこの境地まで踏み込めなかった自分がいます。
でも、その反面「現実はこういう別れが多いんだろうな」と思ったりもする。ドラマチックに始まり、
あっけなく終わる恋がどれほどの数あるだろうか。そもそもドラマチックに終わる恋なんていうものが
どれほどあるのだろうか。そういった意味では、この小説は若者の群像というか、恋愛の(90年代前
半的な思考だけど)本質に迫った作品なのかもしれない。
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ちょっと読むのが遅かったかな?
時代を感じてしまいました。
出た当時に読んでたらよかったのかもしれないけど。
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この本を読むと、大好きな人がいる生活を当たり前にしてはいけないなと思う。
大切な人をもっと大切にしよう。
失う前に。
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二人が結婚してから11年になる。ワシントン郊外の大きな家、犬と猫と四つになる女の子とに囲まれた暖い家庭で、ほんとにせつないです。
こころにつきささるものがありましたね。
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香子のハルによって培われた強さ、やさしさが最後に2人の関係を終わらせる結果に至ってしまってるのがまた切ない。あんなに好きなのでなんで終わってしまうんだろう。前しか見ない人の本質、そこからはずされてしまうことがこんなに悲しいなんて想像してなかった。作品以外に解説も良かった。「このままのこの時を書く。」その短い時に至るまでこんなに素敵に書けるものなんだ。
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出会ってから長い月日を共に過ごし、目指す生活を手に入れるために共に闘い続けてきた香子と治貴。望んでいたものを掴み、同じ幸せに包まれていたはずの二人に、静かに降る別れの物語。
やっぱり鷺沢さんは良いなぁ、と思わずにはいられない作品でした。
作品に流れる空気や登場人物たちの持つ優しさや温かさ、しなやかな強さが、別れへと向かう中でもそのままにあり続け、それ故により切ない物語になっていると思いました。
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感動すると薦められたけれども、人の気持ちは移ろうもので、人生そういうこともあると思ってしまうと、涙は出ない。ただ、情景は美しく表現されていると思います。主人公の気持ちに入り込めば泣けるかも。
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私の住んでいる町の図書館は、貸し出し制限が1人6冊まで。
そうなると、自分の中で毎回激しい戦いが起こります。
自分なりの図書館めぐりのルールは、まず手には取らずに
じっくりと全ての棚を一周するところからはじまります。
次に、これは外せないという本を手に取り、この段階で10冊くらいになっている場合がほとんど。
その後ベンチに座って選抜大会を開催、惜しくも落選した本を棚に返してから貸し出しカウンターに向かいます。
カウンターに向かう途中で実用書の棚を見てしまうとここでもまた
候補が増えてしまって混乱をきたすので、なるべく足早に通り過ぎます。
最近は時間があまりないというのと、夜読むときにあまり重たい本だと疲れてしまうので(笑)文庫本の棚だけをじっくり見ることがほとんどです。
前置きが長くなりましたが、今回の本は前回図書館に行ったときの
落選メンバー。
例えば、涙をこらえるときの描写。
その文章を読んでいるだけで自分も喉がぐっとつまるような、
苦しさが文章から流れ出す。
平易な言葉をでありながらも、こんなに胸に刺さるような
リアルな描写が出来るのだと、力強い文章力に毎回感動します。
ケンカの仲直りのシーンが好き。
これ以上は内容に触れてしまうので書けないけれど、
「感涙のラストシーン」なんていう平凡な宣伝文句を書いた出版社に苛立ちを感じてしまうほど、もっともっと深いラストです。
ぐらぐらとゆれながら、一歩ずつ強くなっていく主人公をつい
自分と重ね合わせながら読んでしまい、私もこうなっていきたいと
妙な憧れを抱いてしまいました。
逡巡とか、絶望とか、希望とか、すべてがぐちゃぐちゃに入り乱れた時、やっぱり人はこんなふうになるんだろうな、それが現実だろうな、と感じたり。
俵万智さんの解説の洞察がとても深くて、なるほど…という感じなので
ぜひ文庫版でよむことをオススメします。
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『僕が学校の授業以外で初めて触れた鷺沢萌の作品。
文庫版で150ページ足らずの分量に、ある男女の出会いから別れまでの過程がすべて凝縮されていて、その濃密さ、エネルギー、情感、すべてにおいてそれまでに読んだどの小説をも凌駕していた。
最近また読んでみたが、1度目とはまた違った角度から影響を受けたように思う。
登場人物の人間的な魅力、アメリカへの憧れを誘うリアルな描写、人種や国境、常識にとらわれない自由な視点、そして人間への深い愛情。
この小説が好きすぎて冷静に判断できなくなっている気もしますが、みんなに読んで欲しいと心から思える作品です。
僕は今年のクリスマス前後はこの本を読んでひとりであったかい気持ちに浸っていました(笑)
講談社文庫から300円ちょっとで出ているのでちょっとオフシーズンな感じはありますがぜひぜひ手に取ってみてください。
それから帯の画像見て知ったんだけど映画化してるらしいですね。 』
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結婚って?家族って?
考えさせられる。
自分自身が結婚してないけど、
結婚したらまた違う見方をするんだろうな。
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断片的に過去が描写されていく恋愛小説。
結末を予感させながらも登場人物は柔らかく、穏やかに物語が進む。
もっと鷺沢萠の小説を読みたかったと思わされる。
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悲しいのだけれど、激しくなくて、穏やかなんだけど、確実に進んでく。
鷺沢さんの作品は、「こういうこと」という明確な答えは出してくれないけれど、
人間を描いているなあ、と感じます。
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どうしようもない切なさ。
どうしてどうしてどうして?って、どうしようもない気持ちでいっぱいになる。
鷺沢さんも、一枚の布を織りあげるように小説を書く人。
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ワシントンで出会い一緒に暮らし始めた香子と治貴。いつも大人で前を向いて生きている治貴。幸せだと思っていた生活は終わりを告げる。