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紙の本
ハンパな遊びが嫌いな方へ!
2001/06/10 01:49
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投稿者:US - この投稿者のレビュー一覧を見る
糸井重里さんには、もともと「ことばのきれはし」みたいなモノを愛撫する文癖がありました。『ほほ日刊イトイ新聞』という空前絶後の新市民メディアを作るに当たり、糸井さんはその文癖を意図的に放棄しました。現在、ネット上でも書籍の上でも、あの深遠なるポピュリズム横溢する「ぐだぐだ言い」に出くわすことは、ほとんどない。『新聞』を名乗ったのはダテじゃない。現在の糸井さんはまさに、朝刊コラムのように、歯切れの良い文体を選んでお書きになっています。
なぜ、「書き方」を変えたのか?
糸井さんの「ぐだぐだ言い」にはちょっとした特徴があります。一見すると「誰もいないところで独りでしゃべっている」…つまり、独白のように見えるのです。しかし、もちろん、人前に出す以上、それは独白じゃありません。独り言のように見えて、実はさりげなく話しかけている文体。小田和正さんの詩の世界とも、通じる文体。それが糸井さんのオハコです。
そうした文体は、プロとしての計算だけで書けるものじゃないでしょう。独り言の世界とは、何を言ってもいい世界。つまり、自由が保障された世界です。独り言に耳を貸す誰かがいて、はじめてそれは同じ場所に集う者同士、共有できる楽しみになる。つまり「クリエイション」として成り立つのです。
独白のように自由な調子で読者に話しかけるとき、クリエイター・糸井さんには、【きっと聞いてくれる人がいる】、という「世の中への信頼」があるのです。自分がどのように話しても、それはクリエイションとして成り立つはずだ。支えてくれる人がいる。どんな創作の意欲にも応えてくれる受け手がいる。
ですが、そうした創り手と受け手のあいだの幸せな信頼感は、どうやら一度、崩れたようです。
80年代初頭、各企業が「物」による生活の充実を掲げた時代から、やがてバブル崩壊へ。まずなによりも景気の回復。そうなったとき、クリエイターたちは二義的な存在へ追いやられてしまいました。
表現の場に於いて、独り言に耳を貸す人がいる素晴らしさは、いつしか「なんとなくしゃべってれば伝わるだろう」という怠惰にすり替わっていたのでしょうか?
これは80年代的自由の空気を思いきり吸い、演出もしてきたクリエイターが、自分を徹底的に見つめ直し、クリエイションの価値とは何か、再考しようとする本です。
釣りの本じゃないのか? いえ、中身は全編釣りですが、本書の「釣り」とは、考えの海に遊ぶための手がかりです。いきなり「人間は誤る動物である。」から始まるんだぜ? こりゃ、どう読んでも思想書です。
しかも、最高に充実した思想書です。
やったこともないのに釣りに好感を持つ男。その男がゼロから学びトナーメントにも出場する。そうしながらこの男がひたすら考え続けるのは、なんと、人間の可能性と限界です。本書の語り手は、そのふたつのあいだを激しく行ったり来たりする。誰かに聞いてもらうことをほとんど期待してないせいか、この本の「ぐだぐだ言い」には、異様な気合いが漂いますヨ。これを書き終えることが、結果的には現在の『ほぼ日』活動に欠かせない、準備段階だったのかも…
僕たちは、彼の体験を追読しながら、結局は団塊の世代、新憲法の申し子が挫折の中から復活しようとする様を見ることになるのです。
副題に「バス釣りは、おもつらい」とある通り、簡単な本じゃない。
しかし、とにかく、ハンパに考えるのはイヤだ!という方には強烈な一冊です。
紙の本
ある種、告白本でもあります
2002/01/07 21:16
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投稿者:茶羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
糸井重里、コピーライターです。超有名な人です。一方、巨人ファンでもあります。これまた超の付くファンです。
そんな彼が門外漢の本を書きました。釣りの本です。バス釣りに凝っているそうです。時代の最先端を行く糸井重里ですから、今流行のバス釣りにハマったとしても何ら不思議ではないのですが、そのハマり方は尋常ではありません。ここまでのめり込んでもいいのかしら、と、読者が心配になるほどのハマり方なのです。
本書の装画はあの『ちびまる子ちゃん』のさくらももこさんが書いています。とってもオシャレな本です。中味ももちろん時代の最先端を行く糸井重里が書いたのですからオシャレです。でも、バス釣り一色です。釣りに興味が無い人はちょっと『ひるむ』かもしれません。いや、案外この本に出会ってバツ釣りにハマるかもしれません。そんな危険性を帯びた本なのです。ですから読もうと思う方は心してお読み下さい。
あっ、言い忘れましたけれど、素人でも楽しめます。
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