紙の本
密室トリック
2019/02/08 21:53
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投稿者:一介の探偵小説好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
裏表紙にある「戦後最高の密室」というワードに惹かれて購入しました。ウリである密室トリックは賛否両論ありそうですが、個人的にはハッとさせる様な良い密室であったなと思います。
また、それ以外にも、イギリスの田舎を舞台にした本作は、アガサ・クリスティの諸作を想起させ、好き嫌いが分かれそうですが、ユーモラスな会話も個人的には面白く読めました。
探偵小説の定石を押さえつつ、定石とは少しずつ逸脱していて、その逸脱が密室に象徴されている様に思えました。
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正直探偵役の人は面白い人だと思いつつもなかなか好意を持てなかった。でも事件の複雑さと展開の軽妙さが相俟って飽きることなく読み進めることが出来た。ほぼ全篇が謎解きで構成されているかのような感じでいくつもの解決案が提示される。そして最後の密室トリック。うわー、こうきたか。思わず唸らされてしまった。
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『図説・密室ミステリの迷宮』で「プロが選んだ本当にすごい密室」に載っていたので読んでみた。
ドアも窓も鍵のおりたホテルの一室で射殺死体が発見された。その直前にはドアや窓から部屋に出入りした二人の男がおり、密室内の衣裳戸棚には女が閉じこめられていた…
探偵役は『ベヴァリー・クラブ』と同じく素人探偵のヴェリティ。この作者のキャラや淡々としたユーモアはいまいち好きになれないのだが、この作品にはぴったり。イラストも素晴らしい。描き方によってはかなり違った印象にもなるであろう真相がわかった時は笑ってしまった。たしかに、本当にすごい密室と言ってもいいかも。
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街のホテルの一室、窓もドアも施錠された状態で男の射殺体が発見された。部屋の衣装戸棚の中にはホテルのメイドが閉じ込められていたが、彼女は手足を縛られて気絶していたという。被害者に関係のある人物が次々と明らかになっていくが、全員が彼を殺害したい動機を持っており……。
さすが、戯曲『スルース』を書いた劇作家兄弟が合作しただけあり、とても演劇的。各キャラクターが「いかにも」っぽく、かつお茶目な文体で表現されてて、読んでて楽しい。サブタイトルに『陽気な探偵小説』とつけてありますが、まさにその通り。英国のユーモアですな。
密室のトリックも衝撃で、こういうの大好き。
登場人物のイラスト入りで楽しかった。
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4
密室トリックそのものは独創的というわけではない。しかし、本作のプロットを成立させるための手段として、この密室トリックは不可分であり、その存在自体がミスディレクションになっていることに感心させられる。その計算された構成美こそが何よりも独創的で知的である。
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探偵ヴェリティが目撃したホテルの窓から部屋に侵入しようとする男。その男パクストンが発見したマクスウェルと言う男の遺体。マクスウェルな部屋の窓から逃げ出そうとして捕まったカニンガム。密室状態の部屋を拳銃で鍵を壊して侵入したヴェリティ。現場の部屋の衣装戸棚から見つかった縛られた女アリス。強請を専門としていた被害者と強請られていた人びと。
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双子の作家が「ピーター・アンソニー」名義で共同執筆した、ミステリ黄金時代の異色作。本作は冒頭に発生する密室殺人を中心に展開していくが、状況設定が非常に風変わりで魅力的である。
死体が発見される前後には「窓から室内に侵入してドアから出た男」と「ドアから室内に侵入して窓から逃げた男」が目撃されており、さらに鍵のかかった室内には「衣装戸棚には両足を縛られた女」が残されていた……次々と明らかになる事実によって探偵たちの仮説はアップデートされていく。二転三転する推論に唸らされ、最後はまさかの真相に驚くこと請け合いだ。
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ピーター・アントニイ『衣裳戸棚の女』読了。
密室の傑作として名高い作品だが、その本質はプロットが完全に閉じられ、無駄がないことに依る。物語としての面白さと落とし所に「密室」が不可欠であり、それが密室モノとされる所以といっていい。
同じく、これは「ユーモア」のミステリであり、この要素もまた不可欠。邪悪さが払拭された世界、それを構築するにはユーモアがなくてはならない。
この「密室」と「ユーモア」がストーリーラインを支える二本柱であり、そこに不可能状況や幾つもの仮説のスクラップアンドビルドが加わることで、魅力的な謎とその解明の物語が成立している。最高のオチに導くプロットのための作家視点での必然性と、作中の因果がメタ的に転倒するところがすごく楽しい。
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アマデウスの作者なんだって。兄弟が2人で書いてる。古き良き時代のオールドミステリーの雰囲気。やっぱり現代のミステリーは、やれ警察のどこどこ所属、かつて警察の仕事をしていて今はしてないとかさ、とにかく設定がこんがらがりすぎて、そういうのに惑わされ、何を追っかけているのかわからなくなりがちだ。→ある宿屋で密室事件が起きる。その謎解き。それだけなので、追うのが楽だぞ。作風なのか時代なのか、なんか登場人物が殺伐してなくて、無駄に疲れなかった。面白いのかというと、まあまあ。
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全く期待せずに時間潰しに読み始めたらすっかり堪能して読んでしまった。戦後最高の密室長編だとか。ホテルの衣装戸棚から見つかったウェイトレスの射殺死体。しかし部屋は完全な密室。トリックが凄いだけでなく話が素敵に面白い。あとがきによるとピーターアントニイとは「アマデウス」「スルース」、ヒッチコックの「フレンジー」の脚本家シェーファー兄弟のペンネームだそうで、筋書きが巧みです。このトリックは見破れない((((;゚Д゚)))))))
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明るく朗らかミステリー。
名探偵ヴェリティ氏のキャラクターがとても良い。好き。
友達のランブラー警部と茶目っ気たっぷりに、されど鋭く事件を解決に導く。
浜風と降り注ぐ陽射しを感じるミステリーというのも珍しいのでは。
被害者が見つかった密室の中に人がいた、というパターン。奇妙な状況の上に次々と現れる容疑者。
ぜひとも解説に記載のシリーズ他著も読んでみたい。
3刷
2021.4.3
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このトリックは凄い。
密室トリックがあのトリックだと判明したときにはガッカリしたが、その後にあの驚愕が待っていようとは!
ユーモアのある語り口も面白い。
その語り口やヴェリティの魅力的な探偵像のおかげで読後間も爽やか。
いつまでも色褪せない密室ミステリの雄編。
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とんでも密室ミステリということで気になって読んでみた。
とんでもトリックの作品は、たいてい傑作かバカミスかのどちらかに振り分けられる。
奇抜なトリックであればあるほど、トリックの必然性や伏線の質が求められる。
本作は、トリックの必然性は乏しく、他の仮説でも密室の謎が説明できてしまうのが残念だった。また、伏線といえる伏線もない。
しかし、トリックの着眼点は見事だ。ミステリでよくある、銃でドアを破るという展開をうまく利用していておもしろい。
それゆえに、とても勿体ない作品だと思う。