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サブタイトルの通り国鉄民営化から10年後の検証本である。平成9年といえばもう現在から20年も前である。
JR30周年に、こうした節目を振り返っておくのも悪くない。
この時点においていろいろと課題は抱えつつも、著者は概ね国鉄民営化を成功と評価している。「いまJRを元の国鉄に戻すべしとの声はついぞ聞こえてこない。これがJR10年の成果なのだろう」と結んでいる。
一方30年目の現在、JR北海道が苦境に立たされている。明るいニュースは北海道新幹線くらいで、災害からの復旧もままならず、路線の大幅な削減話まで持ち上がり、再国有化を唱える者さえいる。本書の中でもJR北海道の坂本社長の話を掲載している。
「われわれは限界までは全力をあげて努力する。しかし自助努力でカバーできないものは国に対策をお願いするしかない」
もうこの時点で、というか分割民営化の時点ですでにJR北海道には「限界」が見えていた。しかしその限界を北海道は、北海道民は見つめてきたのだろうか。30年経っても危機意識を共有できなかったことが、JR北海道の最も大きな失敗だったといえるかもしれない。もちろんJR北海道にのみ責任がある訳ではなくて、様々な反発のあった国鉄民営化を進めるには、JRの未来がいかにバラ色であるかを強調せざるを得なかったという多分に政治的な事情も背景にはあるのだろう。
次の10年後には、JRは40周年を迎え、「元国鉄マン」がほぼ払底する。経営層にもJR生え抜きの人材が増えていくだろう。北陸新幹線関西ルートや中央リニアが開通し、人口減少、都市への一極化がさらに進む日本で、鉄道は、JRはどうあるのだろうか。