投稿元:
レビューを見る
1959年6月30日、沖縄県石川市(現うるま市)の宮森小学校に米軍のF‐100ジェット機が墜落、死者17人(児童11人)という惨事となった。本書に収録されている「血と炎の代償」はその現場のルポルタージュである。
「血と炎の代償」は、戦後沖縄を代表するルポルタージュの一つと言える。それは子どもたちの無残な様子を容赦なく書き出しているだけではない。事故現場の様子を通して、まさしく沖縄の真実の姿を書き出しているからだ。
米軍に命じられるままに現場を隠す沖縄人の警官、沖縄にはどこにでも死神がおり自分たちは予め殺された存在であるということ、それにも関わらず基地を日常の一部として受け入れ鈍磨していく精神・・・・・・。著者が書き出したのはそんな無残な現実であった。
そして事件から50年以上経った今、このルポを見ると不思議な既視感を覚えずにはいられない。私がこれを初めて読んだ時、2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件の記述かと思いかねないほど似ている部分があって実に驚いた。あの時も現場は封鎖され、沖縄の警察は米軍によるその封鎖を助け、人々の精神は自己が起きるまで鈍磨していた。つまり沖縄の状況は、59年と2004年の45年間でほとんど変わっていない、と言えるだろう。
「我々にパラシュートはない」。一人パラシュートで助かった米兵パイロットに関連しての言葉。これはこの事故に限定されるものではなく、沖縄人が置かれている状況そのものを端的に表した言葉である。この著者の叫びを忘れてはいけない。