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紙の本

「きみ」と「うそ」の物語。限りなく切なく、そして哀しい。

2011/12/26 11:23

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

探偵・法月綸太郎シリーズの一作。
複数の出版社から刊行されているため
シリーズの何作目に当たるのかは定かではない。

法月綸太郎シリーズを読むのは
『生首に聞いてみろ』、
『頼子のために』、
『雪密室』、
に続きこれで4作目。

今回は少し趣向が変わっていて、
法月綸太郎部分の他に、
「きみ」という二人称に宛てた、
或いは多用した日記部分が登場する。

この日記を書いたのは誰か。
そして「きみ」は誰か。
よくわからないまま読者は事件に巻き込まれていく。

その事件とは、
都内で起ったOL殺人事件。
しかも顔を焼かれるという凄惨さの上に、
被害者の胃の中から鍵が発見されるという不可解さ。

キーワードはおそらく…
「きみ」と「嘘」。
それもとびきり切なくそして哀しい嘘。

切なすぎた。
そして哀しすぎた。
簡単に言ってしまえば、悲劇。

法月綸太郎シリーズにはなぜか暗さがつきまとう。
まぁ、それがこのシリーズの味であり色なんだろうけれど。

ただ、今回は切なさを生かしきれていない気がして残念だ。
「二の悲劇」というトリックが前面に出てきていて、
ドラマ部分に感情移入がしづらい。
ドラマかトリックか、どちらかに絞った方がよかったのではないかな、
というのが率直な感想。


余談だけれど、
各章のタイトルの横に、
松任谷由美の『卒業』の歌詞が
数行並べられているのだけれど、
これは効果的で、切なかった(よかった)。


祥伝社文庫では『一の悲劇』も刊行されている。
そちらも本書と似たりよったりなのかな。
手が出しづらいけれど、いつか読む。
それほど遠くないうちに。

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