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紙の本
無法とモラルの絶妙なバランスで成り立っていた九龍城砦は啓徳空港と共に香港から消えた。
2004/09/24 21:24
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せどり三等兵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在、九龍城砦はこの世に存在しない。だが、九龍城砦は夢でも幻でもなく、確かに存在していた。
カオルンセンチュイと呼ばれたこの地域は、時代に翻弄されエアポケットとなっていた地だ。
今から百年とすこし前に香港島、九龍、新界などはイギリス領となった。
唐突にそうなったわけではなくアヘン戦争、南京条約、北京条約などを経て段階的に植民地化が進んだと言える。その過程で中国領として残された飛び地が九龍城砦だ。当初は城壁に囲まれていたのでその名で呼ばれるようになったようだ。
このイギリスの中の中国は、かつて中国側の役人や兵士がいたそうだが、条約を盾にイギリスはそれすら拒むようになった。かといって正式にイギリス領とすることもなかった。元々、イギリス法の及ばない地域であり、中国の法も及ばなくなったわけだ。
かくて、九龍城砦は様々な思惑や政治的背景をもって作られた正真正銘本物の無法地帯となった。
「魔窟」、「東洋のカスバ」などと危うい呼び名で揶揄されていた九龍城砦はそんな背景を持つ。無法地帯をオアシスとする人が集まり、生活を営むので実際にそうであった時代もある。
世紀末に取り壊されるまで無法地帯ではあったが、モラルもあった。自警団を組織し、学校を作り、老人ホームを作った。法律とは違う動機の秩序があったのだ。九龍城砦の魅力はそんな無法の中の人間の根的な良心だろう。
本書にでてくる九龍城砦は取り壊し直前のビル群である。取材時に住人は居なかった。
にもかかわらず九龍城砦の一角を丹念に描いた断面図では住人の生活を再現しようとしている。
抜け殻となった建物にかつて住んでいた住人達の匂いが色濃く残っていたからだろうか。オアシスとしての九龍城砦を残してくれた。
たった39ページで九龍城砦の全てを網羅することは不可能だ。ページ数からそれは当然なのだろうが、全てを網羅した本を書くならどのぐらいの情報量となるだろう。日本では他にも幾つか九龍城砦に関する書籍があるが、全てを付きあわせても網羅されているとは思えない。無法地帯であったからこそでもあるが、九龍城砦の全てを正確に把握した日本人はいないのではないだろうか。だからこそビジュアルに訴える「図解」という方法は正解だと思える。
同時にまた、絵をもって再現したこの本は「九龍城砦はまさに時代に翻弄され消えていった」と寂しさを感じさせる一冊でもある。
紙の本
人の営みがぎっしりつまっています
2016/12/06 21:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうゆん - この投稿者のレビュー一覧を見る
欲しい欲しいと思いながらも、ずっと在庫なしだったのが再版されたので早速購入しました。
圧巻です。大型の書面にぎっしりと書き込まれた九竜城断面図に引き込まれます。
暴力的なまでの生活感が溢れ出してきて飽きることなく楽しめます。密度かとにかく濃い。
間取り図好きにもちろん、シミュレーションゲーム好きにもおすすめです。