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紙の本
寺山修司的怪作
2001/01/24 08:29
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投稿者:愛・蔵太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまり知られていない名作、というよりは傑作。文章は我慢できるかできないか、ぐらいのレベルなんですが、話の幻想性と、殺人事件の謎に関する合理的な解決とが、不思議にマッチしている、とても奇妙な小説です。寺山修司が生きていたら劇団・天井桟敷のネタになっていてもいいくらいの幻想性ですか。でも、ちゃんとミステリになっています。怪盗まで出てきます。「呪われた家系」などもあります。うー、これは紹介するのが難しいぞ。
文学系の作家が、趣味としてのミステリとしてこのような話を書いたとしたなら分からなくもありませんが(坂口安吾とか寺山修司とか)、ミステリ、というか、娯楽小説作家プロパーの小説としては、物語的破綻のからめ具合が芸術的すぎます。1980年代小劇場ブームのダシモノとして、下北沢あたりの芝居で見たいような話、という説明だと余計分からないよなぁ。
しかし、井上雅彦がこのような作家的気質の持ち主だとは全然知りませんでした。この路線で長編を、年に1冊というのは難しいでしょうが、数年に1冊は書いていただきたいと思います。こんな話は毎年は書けないでしょう、多分。
(初出:「仮装日記」2000年11月18日)
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