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地方自治とともに歩んだ著者が回想する戦後自治史。いま語る、これからの地方自治、そして東京への熱き思い。地方自治法施行五十周年記念出版(1997年刊)
・第一章 終戦、そして日本の民主化
・第二章 第一次地方制度改革
・第三章 地方自治法の制定とその後の改正
・座談会 鈴木さんを囲んで
・第四章 内務省解体から自治省の誕生まで
・第五章 シャウブ勧告
・第六章 内閣官房副長官時代
・第七章 万博を成功に導く
・第八章 東京都政に携わって
・第九章 地方行政への夢を育てて
・第十章 生涯青春、生涯現役
・鈴木俊一著作・論文一覧
・年表ー鈴木俊一の軌跡と世の中のできごと
めっぽう面白い本である。なんといっても、オーラルヒストリーと異なり、その事績が整理されており読み易い。(これは。それぞれの性質上やむを得ない差異かもしれない)
しかも身内の気安さからか、鈴木氏の生の声が垣間見える部分が少なからずあり興味深い。(本書は鈴木氏の口述を、内務省で部下であった立田氏らが文章化)
また、かつての部下たちの座談会や奥様の回想などからも、氏の事蹟が窺えるのが嬉しい。
オーラルヒストリーではわからなかった部分がいくつかある。例えば、地方自治法改正の変遷などは本書の方が理解しやすい。(市制、町村制等の条文をそらんじていた話、名物嘱託、五十嵐鉱三郎の話なども面白いp42)また、GHQを素人の集団と断じている点などは、その介入に振り回された苛立ちが窺える。東京都特別区の区長選挙の経緯なども、見直しに時間を要したことがわかる。
本書は、地方自治の巨星といっても過言ではない鈴木氏の貴重な回想録であるとともに、都市博の中止について、無念さを隠さないなど、人間味あふれる内容となっておりオススメの一冊である。