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対話と言う形式からか、脱線とまではいかなくても話が多岐に渡って面白い。
「仏陀の夢」と言うタイトルながら、インディアンやアボリジニ、西洋と東洋そして一神論と多神論などと話が広がっていく。
ユダヤの答えを一つに統合した一神教的理想とヒットラーの恐怖心からなる夢が、図らずも意に反して終わりのない競争世界と言う同じ方向に向かってしまうジレンマ。
古きから伝わる土着民のあらゆる答えを受け入れる多神教的和合の実践は、社会を自由な個による一体観へといざなう。
そして自分と向かい合うことで心身ともに、病を乗り越え死と向き合うことを可能にする。
箱庭療法の話では、自分を見失った人がたくさんのアイテムの中から自分の思いで選び出したものを置いて、自分流の箱庭を組み立てる。
その行動が自分の奥深くを吐き出すことになって、心身に染み込んでいた重荷を溶かし身軽な自分を再現する。
その工程を箱庭療法と呼ぶらしいが、これも単に道具に過ぎず、結局のところ指導する人の一歩引いた広い愛でしかその効果を引き出せない。
自分で生み出す倫理・モラルと外から与えられる法・戒律が目指すものは、まったく違う結果へ向かうことになる。
残念ながらこの対談もお互いをかばいあってなのか、対話する二人が仲良しすぎて切迫感を欠き話に力を感じないのだけれども、その内容は現代社会の価値観とか善悪間から遊離していてそれなりに面白い。
アウトサイダーを受け入れてしまえば、束縛と脅迫の中をパニくらずに自由に歩けることを語っているようだ。