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この本が出版されたのは1998年のことだから、およそ10年前のことになる。
訳者の一人船木卓也氏が中学時代の同級生だったこと、この頃からアメリカという国に対する興味がより一層強まったこと、1996年に初めてアメリカを訪れたとき、みやげ物店で見たインデアンアクセサリーのターコイズ・ブルーに魅了されたこと…などから行きつけの書店に頼んで取り寄せてもらった1冊である。
ところが手にしたときには、どうも「今は読む時期じゃないぞ」という気がして、長い間本棚の中に納まったままだった。
そしてアメリカ生活も5年が過ぎ、ほんの少しばかり旅行者の視線から生活者の視線に移行してきた今、本の方から「さあ、ページを開いて」と言ってきたのである。
アメリカ史というと、ついコロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年から始まるような気がするが、その遥か太古、何万年も前から先住民であるネイティブ・アメリカンはこの地で暮らしていた。
LAからミシシッピへの3,000kmの道程には、途中ネイティブ・アメリカンの居留地近辺も通過し、そこかしこにピティ(インディアンの住居)を目にしたりしたが、それは最早観光地でしかなく、本来の意味での居留地に足を運ぶことはなかった。
そしてこの本である。
作者のジェーン・キャッツが、数年にわたりネイティブ・アメリカンの女性14人に、丁寧に何度もインタビューをして彼女たちの生の言葉を採集している。
ここに登場する女性たちは、そのまま居留地に住み続けている人もいれば、ニューヨークなどの都市生活者となっている人もいる。
また芸術家もいれば教育者、活動家、主婦など職業もさまざまである。
ただ彼女たちに一貫してあるのは、どこに住んでいようと、何をしていようと自分の出自(アイデンティティ)に対する誇りを持って生きているということである。
依然としてアメリカ国内では、ネイティブ・アメリカンとコロンブス以降に移住してきたアングロサクソンたちとの間で、様々な問題が持ち上がってはいる。
決して安穏とした日々ではなかったであろう彼女たちを支えているのは、ネイティブ・アメリカンとして生を享け、大地とともに生きてきた、生きているという誇りなのだ。
ふと省みて、私の誇りはどこにあるのかと、わが身に問うた1冊だった。