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オウム真理教事件は、宗教に関心をもつすべてのひとが考えなければならない問題を提起していると、著者はいいます。本書はこうした視角から、現代日本の宗教と教育が抱える問題に斬り込んでいます。
明治以降の日本は、西欧から科学技術文明を取り入れ、富国強兵をめざしました。日本の教育制度はそうした目的のために編成され、それなりに有効な役目を果たしてきました。ところが、敗戦によってこうした日本の教育は方針の転換を余儀なくされます。戦後になると、国民の教育水準が高く勤勉で同質的であることや、世界でもまれに見る平等な社会などを背景にして、日本人は経済の発展のために邁進してきました。と同時に、しだいに宗教への無関心が人びとの間に広まっていきました。
著者は、戦後になって広まった宗教への無関心が、日本人の道徳的心性の荒廃を生みつつあると憂慮します。そのうえで、これからの日本が世界のなかで独立した国家となるためには、西欧諸国に追いつくための教育ではなく、独創的な人材を育成する教育を推し進めていく必要があると主張します。