紙の本
本当にこの人が「ソラリス」を書いたのか??????????驚愕の作品。そして心地よい爆笑。
2001/06/22 02:01
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆたやん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を手に取ったのは、『ソラリスの陽のもとに』の作者レムの作品だったからだ。
数ページ読んで、まずは違和感。なんだこれは????? 同姓同名の別人ではないか?と帯を見直し、再度読む。
んんんーーーーーー??????
筒井康孝じゃないよな??? 百歩譲って神林長平でもないよな???? なんだこれは????? 俺の知ってるレムじゃない!!!! と、凄まじい拒否反応を起こしつつも、何故か本を閉じることが出来ず読みつづけて、いつしか、顔にははがす事の出来ない笑いが取り付いていた。
バカである。愚かという意味ではなく、バカなのだ。この本は。
くすくす笑うのではなく、泣きながら大笑いしながらひひひけけけと声を出し、脳みそがいじられて痒くなるくらいにぶっ飛んで読むのが正しいくらいにバカな作品だ。これは。
笑わせようと狙った部分もあれば、狙ってないかもしれないが面白すぎて笑うしかない話もある。知性とは爆笑しながらでも成立するんだなと妙な納得すら覚えてしまう。
まあ、まずは文中に出てくる<未来史>の年表を斜めにでも読んでみたらいい。それでこの本は離せなくなる。で、知力を限りに読みつづけ、あまりの笑いに心地よい疲労感を感じるだろう。
そして、この本はあの『ソラリス』を書いたレムの著作なのだと最後に思い出そう。これで最高のSFフルコース料理の完食でござい。
いやー。いい本だ。これは(笑)
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互いに認識しあうことも理解しあうこともない知性同士のコンタクト、っていうのはレムが何度も何度もしつこく書いてきたテーマな訳です。
脳や言語、その他肉体的なもろもろの構造に制約された私たちヒトが持てる知性には独我論的ではない、種としての限界がどうしても生じるがために、ヒトの構造とは共通点がない構造から生じた知性との相互理解なんて無理だよね。という。
そういう彼の考えは、まず「侵略か共存しかしないSFの異星人なんて笑っちゃうぜ!」という形で表れて「砂漠の惑星」「天の声」「ソラリス」等の作品の中核になり、
人間に興味を持たない、というか他種の知的生命体として認識すらせずに、ただそこにいて自分達の知性を駆使して何らかの活動を営んでいるようなものたちを生み出してきたのだけれども(惑星ソラリスはちょっと例外的な行動を取るけれど)。
その核となっている思想を、SF的な背景を極限まで削ぎ落として煮込みに煮込んだのが、この本。
ある意味レムSFの集大成。
この本の構造を大まかに言うと、四冊の架空の本のための序文を集めた前半部分と、人間の知能を超えたコンピューターの人間への講義録を収めた「GOLEM XIV」、という二部構成になっています。
一応、前半部分は後半のテーマとなる部分をゆるーく取り扱うことで、準備運動としての機能も果たしているじゃないかと思いますけど、「GOLEM XIV」のあまりのぶちぎれっぷりに、それほどこういうジャンルに興味がない人だと前半だけ読んでお手上げーということも結構あるんじゃないかと。
「意識」等、人工知能関係の核となるものの定義すらあやふやだし、そもそも人間的なものから離れた知性を具体的どころか漠然と想像することすら難しい今だと、やっぱり「GOLEM XVI」も所詮SF、夢物語に過ぎないのかもしれない。
それでもそういうフィクションの場を作り出したレムの想像力、テーマの掘り下げ方の尋常じゃなさっていうのは常人からかけ離れていると思うのです。
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ポーランドの巨匠レムのトリッキーな小編集。「虚数」という邦題があまりぴったりこないが(宇宙法螺吹き男爵こと)泰平ヨンのシリーズなどが好きなら面白く感じるはず。
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架空の歴史をつづった本。ちょっと難解かもしれません。というよりも、好き付きが激しすぎるような気がします。
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こりゃいいわ。メタとベタがいつの間にか混じり合って訳分かんない状態に。物語のテーマやアイデアがSFのそれであるのは勿論、全体の構成がSF、って何て言ったらいいんだろ。
朝目が覚めて、さっきまで見てた夢を思い出してみると支離滅裂、だけど見てる時はとっても存在感あったしエキサイティングだった、なーんてことあるでしょ?あれです。
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[ 内容 ]
人体を透視することで人類を考察する「死の学問」の研究書『ネクロビア』バクテリアに英語を教えようとして、その予知能力を発見したアマチュア細菌学者が綴る「バクテリア未来学」の研究書『エルンティク』人間の手によらない文学作品「ビット文学」の研究書『ビット文学の歴史』未来を予測するコンピュータを使って執筆されている、「もっとも新しい」百科事典『ヴェストランド・エクステロペディア』の販売用パンフレット。
人智を越えたコンピュータGOLEM 14による人類への講義を収めた『GOLEM 14』様々なジャンルにまたがるこれら5冊の「実在しない書物」の序文とギリシャ哲学から最新の宇宙物理学や遺伝子理論まで、人類の知のすべてを横断する『GOLEM 14』の2つの講義録を所収。
架空の書評集『完全な真空』に続き、20世紀文学を代表する作家のひとりであるレムが、想像力の臨界を軽々と飛び越えて自在に描く「架空の書物」第2弾!
知的仕掛けと諧謔に満ちた奇妙キテレツな作品集。
[ 目次 ]
『ネクロビア』
『エルンティク』
『ビット文学の歴史』
『ヴェストランド・エクステロペディア』
『GOLEM 14』
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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「各項目の内容をジェスチャーで伝える」、エクステロペディア(未来に書かれるであろう内容を先取りした百科事典)ユニヴァジェスチャーモデルってwww 可笑しい。
でも本書の白眉は、やはりコンピュータのGOLEMによる講義の章でしょうか。
<知性>とは動物たちのあいだに空いた空虚な穴なのだとか。「誤謬の誤謬として種は生まれた」とか。…分からないこともないような気がしなくもないような。
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スタニスワフ・レムの虚数を読みました。存在しない架空の本の序文を集めたものと、計算機の中に宿った知能の講義録という構成の短編集でした。以前からずっと読んでみたいと思っていたのですが、やっと読むことができました。架空の本の序文は、まあ、こんなものかな、と思いました。しかし、GOREM14の講義録はレムらしい物語で懐かしく感じました。レムは「惑星ソラリス」や「砂漠の惑星」で人間とは異なる形で進化した生物を描いていましたが、今回は計算機の中に宿った知性を描いていました。計算機を扱って仕事をしている人間から見ると、計算機が意識と呼べるような知性を持つようになるには、あと2ステップくらい質的な向上がないとダメだろうな、と思っているのでこれも絵空事の物語ではあるのですが。久しぶりにレムの世界を堪能しました。完全な真空も買って積んであるので、他の本を読んだ後の楽しみに取っておこう。
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〈実在しない書物〉の序文集と、人智を越えたコンピュータGOLEM 14による講義録を収めた作品集。
前半の序文集も愉しいけど、後半のGOLEM 14の講義録が素晴らしすぎる。そこに込められた情報量や、「進化」や「知性」に対するドーキンス風の覚めた視線、想像力に圧倒される。そういえば前半に収録された架空の書物も進化、知性を主題にしたものが多かった気も……。
冒頭に「日本語版への序文」を置くという”お約束”も素敵。誰だよ、”日本挨拶学会会長”梅草甚一ってw
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いやあ、奇書なんでしょうね。半分以上の跋文と奇妙な文体。SFなのか言語論書なのか哲学書なのか。「虎よ、虎よ!」に似ている感じだが、やはりレムなんでしょうね。
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わあ。夜中に読み始めたら眠れないくらい脳を刺激。しかも架空の書物を取り上げているので、そちら方面好きにはたまらない。ヴェストランド・エクステロペディアの話とかどんどん膨らみそうで楽しい。
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5つ星に近い傑作。奇想天外なテキストたち。圧巻はコンピューターGOLEMの講義。全ては理解できないが、荒唐無稽で説得力ある精緻な文章には感嘆する。
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『完全な真空』と対になる本作は、『架空の書物』の『序文』……という設定の短編集。
『書評集』であった『完全な真空』とは異なり、褒めているんだか貶しているんだか判然としないシニカルさは薄いが、書かれることのない本編(?)を読んでみたくなるのは同じ。つい、勿体ないと感じてしまう……。
本作で一番読みたいのは『ヴェストランド・エクステロペディア』。これしかないでしょう。百科事典が大好きな人間には垂涎もの。ああ、何故これが架空の書物なのか……。
本作では『完全な真空』のメタフィクション的な部分がかなり増幅されている……という読後感。また、巻頭の『日本語版への序文』も、それに乗っかるような形になっている。こういう『遊び』の部分も含めて面白かった。
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架空の書物についての序文と講義が収められた作品集。「完全な真空」と対になっているようにも感じるけど、もっと突き抜けた印象も受けた。難解ではあるけど、今作もフィクションと現実の境目が曖昧になっているような感覚には惹かれる。
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アイロニカルに「夢」を語る方法
レムの「架空の書籍の書評」という方法は(ローティ的な意味で)「アイロニスト」的な表現手法だと思います。「公共的な科学言論」ではなく「私的なファンタジー」として科学に関する思想を書くことによって、争いを避けられるというわけです。
おちゃらけ、というか、ユーモアを含んだ表現も、その意味では本書に必要不可欠な要素だと言えます。ふざけた表現でも、内容を理解して共感してくれる人にはちゃんと伝わるし、そうでない人にとっては「真面目に批判する気が起きない」ので争いにならないというわけです。つまり、前者にとっては「ユーモラスな表層の裏に、骨太な思想が隠れている」ように読めますし、後者にとっては「とるにたらない妄想」として読まれるわけです。