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マニ教の「歴史」について、よく知りたいなら最初に読むべき本
2019/02/12 02:12
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投稿者:曽田柴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マニ教とゾロアスター教、教科書で目にしたことはあっても実像なんて日本人はふつう知らない。そんななじみのない宗教の歴史について、たった80ページほどで簡潔にわかりやすく書かれています。
西はスペイン、東は中国まで1000年以上にわたって信仰されたにもかかわらず姿を消したマニ教という宗教の歴史について大まかな知識を得たいのなら、この本以上に手に取りやすい本はないでしょう。
ゾロアスター教との比較の中でマニ教がなぜ発展したのか、なぜ消滅したのかについて考えさせられます。
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マニ教とゾロアスター教の歴史について
2002/07/30 10:14
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投稿者:影山 師史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マニ教と聞いて思いつくのはアウグスティヌスであるが、彼の著作に書かれているようにマニ教は当時のあらゆる宗教をどんどん吸収していき最盛期は中国に及ぶほどに大きな勢力を持っていた世界宗教であった。しかし、現在ではマニ教はほぼ滅んでしまっている。その原因として考えられるのは、そのマニ教の性質であろう。本書は、このマニ教を歴史的に概観しながらペルシアのゾロアスター教との関連を考えていく。アウグスティヌスにおいてはマニ教は主にキリスト教の関係で書かれているが、マニ教の世界観などに多大な影響を与えたのはゾロアスター教である。この本は小著ではあり、教科書的であるため細かくは論じられてはいないが、私は、例えばズルワーン主義などその端々の興味深い部分がちりばめられていた。
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歴史の中で消滅してしまったマニ教を、同じ善悪二元論を説くゾロアスター教と比較して文化、国家、歴史の背景などと共に述べる。
名前は知っているけど詳しいことはあまり知らないマニ教の教義や変遷についてササッと分かってよかったです。
ゾロアスターの二元論とマニ教の二元論はまた違うのね
マニは八つ裂きにされて殺された説もあるけど
実際は割合自由で獄死の可能性は薄いそうです。
マニ教は教義がでかくなりすぎたのが続かない原因だったのね。
マニ教といったらアウグスティヌスだけど、彼は全盛期のマニ教に傾倒して、議論に夢中であったが、その後キリスト教の立場からマニ教を反駁するけど、
マニ教を体系化して批判したわけではなかったそうですよ。
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来月、アゼルバイジャン(「火の国」の意)を旅するので、かつてこの地でも栄えた火を崇拝し、拝火教とも言われているゾロアスター教関連の本を読み始めたが、その1冊目。
主に同地域(ペルシア帝国)で興ったゾロアスター教とマニ教を比較し、一方は地上から消え(マニ教)、一方は現在も約15万人の信徒がいる宗教であることから、話しが展開される。
マニ教は、名前くらいしか聞いたことがなかったが、バビロニアから東は中央アジア・中国へと布教され、西はローマ帝国内(シリア・エジプト・北アフリカ・小アジア・スペイン・イタリア)で隆盛を誇り、公認前のキリスト教に次ぐ勢いだったという。
しかし、イスラム教の国の興隆による迫害などにより、13~15世紀には世界から消えた宗教となってしまう。
キリスト教をはじめ、迫害された宗教は多いと思うが、それでも生き残った宗教と消えてしまった宗教の違いは何か?
最終的には、迫害されても信仰を捨てない信徒の信仰心なのであろうか?? といろいろと考えされられる。
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歴史の教科書ではおなじみの宗教であるが、非常に謎の多い宗教でもある。オリエント世界にとどまらず、ヨーロッパから東アジアにまで伝播したにもかかわらず忽然と歴史から消えてしまった。また、キリスト教にかなりの影響を与えたと考えられていることから人気のテーマのようで関連書籍も多い。本書もそのうちの一冊である。100ページに満たない中に2つの古代宗教の成り立ちから消滅までの経緯、教義や特徴、与えた影響などがぎっしりと詰まっている。
マニ教が様々な宗教や文化の要素を取り入れ宇宙観や教義を変化させながら広がっていく様子は日本人の宗教観――クリスマスケーキを食べた1週間後にはお寺で鐘をついて、その足で神社にお参りをする――ような、ある種の節操の無さにも似ていて興味深い。相手の懐に入り込むようなやり方が反感を招き、大規模な弾圧につながったようではあるが、一方で混ざりすぎて様々な宗教の一部となることで消滅していったようにも思える。
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・死は個々の人間にとって、ある意味では、善が悪に屈する最悪のときである。それゆえ死は悪の力の最強のあらわれとしてもっとも恐れられた。したがって死体にふれることはタブーであった。一方死のときは人間の魂が審判に臨むときである。善に力をつくした人の魂は、ハラ山の頂に架けられたチンワト橋という選別の橋をとおって楽園に導かれ、悪に従ったものはこの橋から地獄に落とされた。このようにゾロアスターの倫理観は善をすすめ悪を否定する極めて明快な論理につらぬかれている。そこから導かれる世界の終わりの審判や救世主の思想は、その後他の宗教に大きな影響を与えた。