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読み応えのある小説を読んだ直後で、気楽に読めそうなので手に取った。20年前に買って、読まずに置いてあった本。
森田療法やユング、フロイト等の心理学を学んだ心理学者が、15話の日本昔話をかなり独自の視点から分析している。中には深読みし過ぎではと思うものも結構あったが、こうした視点で見直してみると、昔話にはさらっと読んだだけでは気づかない面白さが色々と隠されていそうだ。
浦島太郎がマザーコンプレックスを内在しているなど、考えたこともなかった。
興味深かったのは、森田療法では自己中心性こそが精神衛生上諸悪の根源だという箇所(33頁)。
「……問題にされなければならないのは、神経質自体というよりは、むしろそれが良質か悪質かである。そして、何が悪質な神経質かと言えば、自己中心的に発揮される神経質に他ならない。たとえば、『自分の』心のありようばかりを気にしてあくせくしている人は、ごく自然に生ずる不安や恐怖をあるがままに体験して受け流すことができない。不安や恐怖をいわば異物視して、追い払おうとするあまり、かえってそれに敏感になり、それを強めてしまう。」
少し前に読んだ『ネガティブ・ケイパビリティ』を思い出した。闘病や育児、介護等にも必要な視点だろう。