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紙の本

縁は異なもの味なもの

2002/02/27 17:52

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投稿者:dawn - この投稿者のレビュー一覧を見る

 文学を愛する繊細な学生ナタリヤは、工科大学の講師トゥニョからプロポーズされた。けれども、自分が本当にこの自信家の男を愛しているのかどうかわからず、その場から逃げてしまった。気持ちを整理するためにしばらく旅に出ることにしたが、姉の頼みで、夏休みを過ごしている姪2人も連れていくはめになった。駅に着くと音楽雑誌を手にした黒ずくめの若者がいて、なぜか電車の中までぴったりついてくる。いぶかるナタリヤを尻目に、小さいほうの姪ラウラが意外なことを口にした。この男は、トゥニョの弟フィリップだというのだ。彼は兄を傷つけたナタリヤを非難し、よりを戻させるつもりなのだ。ナタリヤはフィリップから逃げだそうと、うだるような猛暑のなかを姪たちとかけずり回る。しかし、どこまで行ってもフィリップは執拗に追いかけてくるし、おまけにラウラが水疱瘡にかかってしまった。さあ、どうする、ナタリヤ?
 文学好きのナタリヤと音楽好きのフィリップは、第一印象こそ最悪だったものの、しだいに心を通わせていく。その過程がちょっぴりもどかしく、微笑ましい。個性的な姪たちも、このとんだ追いかけっこをゆかいに盛り立てている。
 表紙や挿絵にはひと気のない町角の風景がモノトーンで描かれており、物語の内容とは一見ちぐはぐにも思えるのだが、こういう静かな町の中をナタリヤたちやフィリップが懸命に走り回っていたのかと思うと、なんとなくおかしさがこみ上げてくる。この作品は、“イェジツェ物語”と呼ばれる連作の10作目にあたり、作者はその後の作品も書き続けているとのこと。他の作品もぜひ読んでみたい。

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