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「下剋上」は「徳政令」、「鎖国」などと並び、聞きなれた歴史用語ではないだろうか。
筆者は言う。「下剋上とは、単なる主従関係、身分的上下関係の組みかえにとどまらず、社会構造そのものの組みかえであって、史上類をみない変革の時代を象徴するにふさわしい言葉」(216p)と述べる。
悪党がいわれる中世の社会に、大乗院寺社雑事記などに「下剋上の至りなり」という形で表現される「下剋上」。ひるがえって、その基礎構造としての「郷村」、「物流」、「庶民生活」、「戦乱」のなかに変化を読みとってゆく。
最近、格差社会ということがいわれる。戦後60年の多くは、流動化社会で「みな中流」を意識し、中流になれるかもしれない社会、中流だと思い込んでいる社会が、ここへ来て、「少し違うのでわ?」、「案外、固定社会でわ?」と、思わせる点がすくなくない。
いつくる、その構造変革の時代。「ご破算で願いましてわ」の社会は、「下剋上」と言うべきものかもしれない。
阿部 猛著『下剋上の社会』(教養の日本史)ー東京堂出版 1998年ー 読後感である。