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2019年10月25日読了。
⚫️「8マン」の桑田次郎
→拳銃不法所持事件で逮捕
→漫画界からしばらく姿を消したが
どん底の困窮生活の中で豁然と開眼し
「まんが図解/般若心経 」など
宗教をテーマにした新境地を開拓するに至った。
⚫️顧問からの言葉
「内田君、編集長になったら、自分で企画を考えること
はいっさいやめることです。そして、寄稿家の先生方
にせよいかに上手に人間を使うか、ただ、その一点に
だけ全精力を集中させる」
⚫️僕は編集会議を主宰する立場から、そうした売れ筋の
ライバル誌とかウケているマンガとかについての論議は
いっさい取りやめることに決め、編集部員一人一人が少
年時代に経験し、大人になった今も鮮烈な記憶として
残っている事柄(いじめられた経験、病気や貧乏で苦労
したこと、失恋の思い出、学校の成績など )とか
同じく少年のころ熱中したスポーツ、映画、ラジオ放
送、雑誌、書籍の話題、あるいは自分に影響を与えてく
れた両親、教師、隣の小父さんや小母さん、友人につい
て交々語り合ってもらうことにした。
⚫️読者である〜
⚫️ソクラテスによれば、教師は産婆で、生徒は妊婦である
という。生まれてくる嬰児は、教え子たちが成人して、
世のため人のために成し遂げる仕事の業績にたとえられ
る。産婆は妊婦の胎内で新しい生命体が健全な発育をし
て、つつがなく誕生できるように努める介添え役だか
ら、妊婦以上にお産について精通していなければならな
い。けれども、産婆がどんなにお産のことが判っていて
も、嬰児を産み落とすのは妊婦であって、産婆ではな
い。ここで産婆を編集者、妊婦をマンガ家なり、作家な
りに置き換え嬰児を作品に当てはめて考えてみれば、す
べては分明であろう。
⚫️雑誌の身上(財産)は、一言にして、読者の好奇心を充
たすことにある。好奇心とは、“奇を好む心”と書く。
⚫️大伴昌司さんは、“奇っ怪紳士”に列せられる人物であっ
たことは確かだがそれよりもむしろ孤独な完全主義者と
しての印象が、僕には強く残っている。大概の人が(図
解特集の仕事に係わったカメラマンであれ、イラストレ
ーターであれ、編集者であれ )大伴さんの針でつく隙
もない完璧な編集作業についていくことは難事で、ほん
のちょっと手抜かりしたり、あるいはその手抜かりを糊
塗しようとしたりすると、“大伴火山”は凄まじい怒りを
爆発させるのだった。
⚫️来日した周恩来首相が失脚中の田中角栄を訪ねた理由と
して、“最初に井戸を掘った人を忘れない”と述べたもの
だったがさすれば、“あとから井戸で水を汲む人ばかり
がもてはやされる”のが日本人と言えるのかもしれな
い。
⚫️“想うことは成すことなり”とは私製格言の一つなのだが
古人はこれを“念ずれば花”という。
⚫️あとになって気づいたことだが、このような落ち込んだ
状況下で作った“雑誌の顔”である表紙なども、色使いは
ブルー系、ロゴも細身の明朝でその時はそれが“ベス
ト”のものと映るのだ。右肩上がりで、心機充実してい
る時は、金赤中心の暖色系、ロゴも太ゴシックの多用
で、見るからにエネルギーを八方に放射している店頭効
果満点の表紙を知らず知らずの内にちゃんと作っている
のだから人間とはなんとも正直なものであろうか。
⚫️新所沢・梁山泊に集った奇才たち
・山男、海男、そしてもて男(特に男にもてる)とし
て、その自然流ともいうべき洒脱な生き様が魅力のア
ウト・ドア物のライター駒形且郎
・ぼくの知る限り、博覧強記にかけてはナンバー・ワン
の奇才、花房孝典さんは、その好事家としてのジャン
ルもメンズ・ファッション、車ウェスタン・ミュージ
ック、フォーク・ギター、ガン&ナイフ、骨董、韓国
演歌、古典落語etcと、際限がない。
・おそらくは、水墨画家として現役ただ一人かと思われ
る高木克平さんも変奇人の名を辱めない。
・消息が絶えて久しいが、新所パーティの常連の一人だ
った住谷道哉さんも忘れ難い人物である。天才の上
に“超”の字がつく人で、高校在学中に名古屋大学の応
用物理学教室に特別聴講生として通っていたという。
それから精神病院に入院(本人は「周りの人たちに、
無理やり入院させられた」)と話していた。
⚫️“新所パーティ”の不文律のルールは、
①仕事の話はしない②他人の悪口は言わない③仲間同士
で口論はしないーといったところで話柄は森羅万象に及
んだ。
⚫️広告局のロッカーの中に、大手企業、広告代理店各社が手がけた各種の
調査資料が“死蔵”されていることに、ぼくはかねて目をつけていたからだ。
そこから、若者を対象にした、大量の調査データを借り出してきて、
編集室で一人パラパラと項を捲っていった。
〜ふと、あるデータに目が留まった。それは“今(70年代の末)の中・高校生
(男子)にとっての「巨人・大鵬・卵焼き」は何か? ”という
ちょっと風変わりな調査。
〜中学生→①巨人②角川文庫③マクドナルド、高校生→①ポルノ②角川文庫
③マクドナルド
〜角川文庫というのは、そのころ角川春樹さんが映像、出版、音楽のメディア・
ミックス戦略の立役者となっていて、若者たちの間でカリスマ的存在だった
ことによるものだと思われるが、ぼくは“文庫”と“マクドナルド”を結ぶ“何か”
があることを直感した。
〜2つの共通点、“スナック”から要約したのが
①(値段が)安くて②(持ち運びが)手軽で③中身が豊富
〜つまり、若者を対象にした生活文化情報誌が目指すべきものは
“安くて手軽で情報を満載”したス��ック・マガジンであらねばならない。
スナック・マガジンとは、体裁上は新聞と雑誌の中間形態
“ペーパー・マガジン(新聞スタイルの雑誌)”となるであろう
『HOT-DOG PRESS』の誌名は、以上のような思考過程を経て決まった。
⚫️P234 人口統計の推移の変化(男性余剰社会)
→“男性余剰”社会は、意識と生活行動の両面にわたって
必ずや価値基準の大きな変革がもたらされるに違いない。
⚫️『マガジン』時代の直属の上司だった椎橋久第三編集局長が
折に触れて「内田くん、人脈を愛せよ!」と言ってくれたものであったが
その言葉はぼくの編集者人生における大きな拠り所の一つになっている。
⚫️P260
→ハブが生息する島は、“一つ飛び置き”になっているというのだ。
→学説は色々あるらしいが、まだ定説は無いようだ。
→⚪︎⚪︎美人の一つ飛び
→文化・スタイルの一つ飛び置き説
⚫️“あとから行く者はかならず勝つ!”
⚫️“縦横考慮(講談社の創業者野間清治の遺訓)”
⚫️かつての時代、雑誌や書籍は“人生の糧”としての役割や使命を持っていたが
大量消費社会の今日にあって、それらは“愛”の欠落を余儀なくされ、
実用・利便の具となってしまった観がある。野間清治(講談社の創業者)の
遺訓「おもしろくてためになる(教育生)」は、今は「おもしろくて役に立つ
(利便性) 」と改変せざるを得ない状況下にあり、それは男女和合ならぬ
愛なき男女乱交の現代社会相ともどこかで照合しているように思える。
この辺りに、今日の出版界の最大の危機が潜んでいるとみえるのは、
ぼくだけだろうか。
⚫️“奇”を探求する術について付け加えておくならば、ぼくに“奇”の在り方を
示唆してくれたのは株屋仲間で言い交わされている“人の行く 裏に道あり
花の山 ”という俚諺であった。大勢の人がぞろぞろ見物しながら歩いていく
広い道からふと逸れて、裏道を巡って行くと、そこに自分だけの“花の山”を
見いだす(まさに“他に抜きんでるものは他と異なる”だ)。
〈言葉〉
エポックメーキングとは - コトバンク
エポック‐メーキング(epoch-making)
[形動]ある事柄がその分野に新時代を開くほど意義をもっているさま。画期的。「エポックメーキングな発明」 暗澹(アンタン)とは - コトバンク
あん‐たん【暗×澹】
[ト・タル][文][形動タリ]
1 薄暗くはっきりしないさま。暗く陰気なさま。
「曇空には雲が―と動いていた」〈梶井・冬の日〉
2 将来の見通しが立たず、全く希望がもてないさま。「暗澹とした表情」「暗澹たる人生」コスモポリタンとは - コトバンク
コスモポリタン(cosmopolitan)
[名・形動]
1 国籍・民族などにとらわれず、世界的視野と行動力とをもつ人。世界人。国際人。また、そのようなさま。「コスモポリタンな感覚」
2 定住しないで、世界を放浪する人。
3 コスモポリタニズムを信じる人。世界主義者。 拙速(セッソク)と��� - コトバンク
せっ‐そく【拙速】
[名・形動]できはよくないが、仕事が早いこと。また、そのさま。「拙速に事を運ぶ」⇔巧遅(こうち)。
薫陶(クントウ)とは - コトバンク
くん‐とう〔‐タウ〕【薫陶】
[名](スル)《香をたいて薫りを染み込ませ、土をこねて形を整えながら陶器を作り上げる意から》徳の力で人を感化し、教育すること。「薫陶のたまもの」
「しかし若い生徒を―するのは中々愉快なものですよ」〈野上・真知子〉
逼塞(逼塞)…1 落ちぶれて世間から隠れ、ひっそり暮らすこと。「郷里に逼塞する」
2 江戸時代の武士や僧侶に科された刑罰の一。門を閉ざして昼間の出入りを許さないもの。閉門よりも軽く、遠慮より重い。
蟄居 (ちっきょ)…江戸時代,公家・武士に科された監禁刑。一室に拘禁謹慎させる。蟄居,永蟄居,蟄居隠居(単に隠居とも)の別があり,永蟄居は終身刑,蟄居隠居は引退させ子孫に家督を譲らせた。→刑罰
→関連項目池田騒動
呵々多少…からからと大声で笑うこと。
ペダンチスム…学問や知識をひけらかすこと。衒学(げんがく)な態度。ペダントリー。
標榜1 善行をほめたたえ、その事実を記した札を立てて世に示すこと。また、その札。
2 主義・主張などをはっきりと掲げ示すこと。「自由と民主主義を標榜する政党」