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オーストリア帝国が巨大になれたのは、こんな臣下たちの働きがあったから!?その主人公がユダヤの青年であったこと、その彼が辿っていた境遇とマリア・テレジアの夫君となったフランツの立場に共通の苦しみがあったことなど、展開も早く、描写も視覚的でもあり面白く読み進められます。
政治的な策略とか人間心理がわかりやすいのがよいのかも。
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めちゃめちゃめちゃめちゃ面白いです。時代小説だからって読まなかったら人生三割くらい損してた!世界史全然わからないけど大丈夫だし、そんなの忘れるくらいテンポよくて、ぐあーって読めます。宝塚観に行ったけど、原作が偉大すぎました。エリヤーフーかっこよすぎ。
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主人公がユダヤ人なので、根底に差別という壁があって全体的に暗い印象が付きまとう。でも波乱の人生を歩みながらも自分の人生を切り開いていく主人公エドゥアルトはかなり格好いい♪
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歴史もの?というだけで敬遠してしまう人はかなり損します!!
史実の部分とノンフィクションがうまーくからまって、見事に織り上がっています。
歴史のうねりに翻弄される登場人物たちはどれも魅力的。
友情や恋愛のえがきかたが現代の私たちに通じるものがあって、感情移入しまくり。
下巻ラストの方の聖書のシーンには滝涙。
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ハプスブルク朝は1740年から1745年までの短期間ではあるが,帝位を失ったことがある。その時の当主が本書の女主人公のマリア・テレジア女帝だ。本書のもう一人の主人公は架空の人物であるが,この男主人公エドゥアルトをユダヤ人に設定し,当時のユダヤ人の迫害の状況を生々しく際立たせている。
ユダヤ人は主イエスを殺害した罪深き民としてキリスト教徒から憎まれている。不潔で狭い居住地区の妙な言葉を使う得体の知れない人間として,また貪欲で抜け目ない高利の金貸しとしても。
確かにユダヤ人の金貸しは年利20%を超える利息を取る。時には170%もとった例があるほどだ。生活の苦しい庶民達の多くは,ユダヤ人から金を借りており,その返済に困っている。だが,それは初めから全てを承知しての借金である。ユダヤ人がだまして貸し付けているわけではない。また,ユダヤ人は30種類もの税金を納めなければならず,しかも例外的な仕事を除いて金融業以外の職業に就くことが極めて難しいのでやむを得ない自衛の手段だった。だが,借りる方としては,そう簡単にはいかない。金が入り用の時は,なんとしても返す積もりで借りるのだが,様々な胸算用が狂って事態が絶望的になると,つい最初の話は棚に上げ,高い利率を恨みたくなる。それを課しているユダヤ人の責任を追及せずにいられない。主イエスを殺した永遠の罪人という命題は,その際,極めて好都合なものだった。募る憎悪は観念に変わり,親から子に受け継がれ,血に染み込んでいく。
女帝はハプスブルク家の当主であり,ハプスブルク家はキリスト教を守護する使命を神から授かった一門であるという信念がある。そんな女帝がエドゥアルトをユダヤ人とは知らずに恋し,ユダヤ人と知ったときに,恋する女性とハプスブルク家の当主という2つの人格の間で苦悶する。
そのような恋物語とともに,当時の1700年代のヨーロッパの混乱と言うか,戦乱を絡ませ,話は進む。
エドゥアルトはユダヤ人を捨て,オーストラリア人になろうと決意し,そのように行動するが,周りが認めてくれない。ユダヤ人としても迫害され,オーストラリア人として生きて行こうとしても蔑まれ,結局行きついた答えは,ユダヤ人である家族を捨てられない,ということは自分もユダヤ人として戦っていかなければならないということだった。
どんな社会の門でもユダヤ人には閉ざされている。そんな社会もユダヤ人を嘲弄し,その幸せを許さない。どうすればユダヤ人は迫害されずに済むのか。それは,ユダヤ人の故郷であるシオンの地・いわゆるエルサレムの丘に戻れば良いのではないかということであった。シオンにユダヤ人だけの国を建設することが出来るなら,屈辱を受けることなく,自由で平等で人間らしい社会で暮らせる。これが,どれほど努力しても社会に同化出来ず,憎悪と差別の対象となってきたユダヤ人たちの絶望と悲願から生まれた結論だったのだ。
全2巻
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18世紀ヨーロッパ史の白眉はハプスブルク家マリア・テレジアとフランス王ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人の女傑ぶりであろうが、なかなか詳細な史書にめぐりあわない。
そうした中で藤本ひとみさんの本書はエドアルドというユダヤ人を狂言回しにオーストリア戦争の内実をおもしろおかしく小説化している。
上下2巻の長編をいっきに読み終わった。
エドアルドとマリア・テレジアの恋物語となると宝塚歌劇ならともかく、眉唾ものとなって歴史ファンは興ざめするが。
その虚実はともかく、マリア・テレジアがハンガリーを生涯大切にしたという史実、オーストリア戦争の顛末には納得した。
「ナポレオン」にも感心したが、藤本ひとみさん近世ヨーロッパ史、塩野七生さんのローマ史は西洋歴史小説の双璧である。それぞれ勝手気ままな女傑というのも現代日本の皮肉である。
ともあれ正しかろうと誤りであろうと、人が記憶するのは史実ではなく物語なのである。
12/10/10
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登場人物みんながすごく人間的で
それぞれに感情移入しながら、一気に読みきった。
マリア・テリジア時代のオーストリアと
怒涛の西洋の世界情勢を駆け抜ける
ユダヤ人、エリヤーフーの野心と孤独。
テレーゼとの愛憎
フランツ、バチャーニとの友情
フリードリヒへの羨望と裏切り
ユダヤに残した家族の愛
気品高い大河ドラマのようだった。
面白かったし、勉強になりました。
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18世紀。ユダヤ人はキリストを殺した罪としてヨーロッパ諸国で差別を受けていた。そんなユダヤ人としての己から脱する為、主人公エリヤーフーは片目を失い、エドゥアルトと改名した。オーストリアを舞台とした己の存在価値を認めさせる為の野望に満ちた話。
銀河英雄伝説みたいな感じ。登場人物が魅力的で戦闘シーンなんかも面白い。影を背負った野望に満ちた主人公というのもかっこいい。
自己の限界まで努力するがいいと。誰も耐えられない困難に耐え、未知に挑戦し、危険を顧みず、不可能を可能とすることで、周囲に力を認めさせるのだ。
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藤本さんの作品この中では一番好きな作品。
主人公が超人的な能力で運命を切り開こうとする姿は、一歩間違えるとご都合主義にしか見えなくなりそうだ。だが、暗いバックグラウンドと秘密を背負う主人公が運命を切り開こうとする姿は悲壮でありながら痛快で、バランスがとれていると思う。
ただ、あまりにもテレジアの性格が残念で、主人公がテレジアに持つ感情はいまだに感情移入できない。
そこ以外は大好きな作品。
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ブルボン・メデイチときて満を持した形でやってきたハプスブルク家の物語。それに主人公がユダヤ人とヒロイン格で出てくるのが女帝マリア・テレジア。ユダヤ人という迫害されていた主人公と女一つで欧州随一の大帝国を背負わないといけなかったマリア・テレジアの関係は惹かれあい、そして破綻してゆく。日本人にはあまり縁のない欧州大河小説。ぜひ下巻まで一気読みして欲しい。
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私を認めさせる、それは、誰もが抱く野望。
歴史小説であり、キャラクターものであり、恋愛小説であり。
読むのはしんどい。がんばったことを認められない、自分ではどうしようもない部分で扉を閉ざされるエリヤーフーが辛すぎるから。自分のコミュニティの権威、認めてほしかったラビに真っ向から否定され、仕事も恋もままならず、愛する家族には理解されても迷惑をかけどおし。それがすべて、“ユダヤ”というアイデンティティーに起因するとしたら。“ユダヤ”を捨てて、自分を認めさせ、そしてその自分で”ユダヤ”を認めさせる。なんともしんどい野望である。
読むのはしんどいけれど、それ以上にエリヤーフー改めエドゥアルド、エディの「認めさせる」という黒い炎が、読むのを引っ張ってくれる。近付いて、焦がれては否定される繰り返しを、ぐんぐんと読ませる。息がつまりそうになりながら、一気に読んでしまう。
エディに向けるフランツの愛情が優しい。疑わないわけではないけど、信じたいという強い思いが温かい。立場も弱く、領地は奪われ、色々なものをどんどん手放していくフランツ。でも彼はそんな自分の運命を恨むわけではなく受け入れていく。そんなフランツだから、エディも一身に忠誠を誓い、ジャカンやヴァランタンだって、フランツの意に沿ってエディを助けた。ジャカンは、別にエディを陥れようというよりは、フランツを守ろうとしたのだと思う。すべては優しすぎる主のために。
テレーゼは愚かだが、その愚かさがイライラさせつつ、でもこのエディに惹かれざるをえない読者の気持ちとリンクする。誰だって自分を正当化したいもの。テレーゼは自分が惹かれたのに、“ユダヤ”のエディが誘惑したと彼のせいにした。エディも自分のままならない運命を“ユダヤ”に起因するとした。
宝塚で公演したからか、登場人物がこれでもかというイケメンぞろいな気がするんだよね。フリードリヒもオイゲン公子もバチャーニもゲオルク・カイトも。というわけで、歴史モノが好きな人だけでなく、イケメンてんこ盛りを楽しみたい人も読めばいいと思うよ。
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この本が藤本ひとみとの出会いでした。他のものが一切目に入らなくなるほど、読みふけった少女時代でした。
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意外な快作。私は主人公が差別され一向に努力が実らないタイプの作品は苦手なのだが、これはすらすらと読むことができた。この作品は史実にスパイスを加えた複雑な人間関係のもとで形成される軍略モノ。中世ヨーロッパでは貴族や王族で婚姻を結んだことで姻戚関係がややこしくなるという現象はよくあったことなのだろう。藤本ひとみ先生はこの部分を上手く描いて仕上げている。
しかし、てっきり軍事モノかと思っていたら、どちらかといえば恋愛色の方が強かったのことには驚いた。
様々な人間関係の問題を下巻に持ち越すことになったのでそれを楽しみにしたい。
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ユダヤの宿命に抗う主人公エドゥアルトと主君フランツの友情物語。物語前半で早くも主人公が瀕死の状況に…一章が短く物語のテンポが良く一気に読むことができる。波乱の人生に一喜一憂できる数少ない名著である。
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少しモンテクリスト伯に通ずるような活劇。
ユダヤ人として生まれた主人公が迫害を受け、自由を求めて、ユダヤ人としての出自を捨ててオーストリア王家の近傍で活躍していく様子を描く。
相当の分量で、読むのに少し疲れるが、全体としてはとても面白い物語だ。
かつてNHKの青春アドベンチャーでラジオドラマが流されたが、構成も音響効果も巧みでとても面白かった。
本作品が好きな人は、是非、青春アドベンチャーも聞いてほしい。魅力がさらに増すに違いないと思う。