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18世紀ドイツの統治システムの性質の問題から、19世紀のドイツ社会・政治の問題、そして帝国創設期の議会政治という流れで構成された論文集。各領域での定評ある研究を土台としつつ、鋭い分析を加えている。個人的に最も関心をもって読んだ「啓蒙絶対主義と革命」では、ルドルフ・シュターデルマンの所論(ドイツでなぜ市民革命が起こらなかったのかといえば、啓蒙絶対主義の実績が存在したからだ)が検討に付される。そこでは、革命に対して改革を対置するドイツの思想的伝統が、シュトルーエンゼーやハルデンベルクの発言から読み取られるが、それでは1789年からジャコバン独裁が始まる時期まで革命熱狂が生じたのはなぜかという問いに答えられないという指摘がなされる。そこで、絶対主義諸国における改革が1780年代には停滞しており、人々は現状に決して満足していなかった。その表現が革命熱狂であり、ドイツにおける改革主義定着の時期は、革命の推移をある程度見極めたあとに定められなければならない、としている。もちろんだからといってシュターデルマンの問題提起の重要性が切り捨てられることはなく、フランスにおける革命史学の転換なども併せて、西欧対ドイツという対立図式を考え直す時期が来ているのではないか、という指摘で終わっている。18世紀末ドイツを研究しようとしている人間にとっては非常に考えさせられる論文であった。