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紙の本
ゲルマニウムの夜
2001/12/16 06:02
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投稿者:333 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作品。暴力と不合理な共同体が描かれている。
修道院に入居した朧は、当然のようにそこで虐待を受ける。といっても彼も年なので、そこそこは考えることはできるのだが、それ無視するかのように上級にこらしめられる。ただ、彼自身も暴力的である以上、それがのちのちの糧となるところが面白い。
ちなみにこれは、王国記シリーズです。
紙の本
あまりにもショッキング
2001/11/30 22:19
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投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショッキングなフランシス・ベーコンの表紙にショッキングな内容、さらにクイズ番組でよく不正解を出してもにこやかに笑っていた気さくそうな謎の坊主のおっさんが作者…実にショッキングだった。
一種独特な修道院という、一般人にはおよそ縁のない世界を描いた萬月氏は実際に修道院で育ち、クリスチャンだという。もちろん誇張されているだろうが、リアルに感じられるのはそのせいだった。異様な世界にすんなりトリップできてしまうドラッグのような物語。
紙の本
遠大なる試みの第一歩
2001/05/10 19:55
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投稿者:旅歌 - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前から萬月さんの描く主役、あるいは主役級の人物たちにはちょっとした傾向があった。もちろん例外も数あるのだが、最近作では、『二進法の犬』の乾、『ぢん・ぢん・ぢん』のイクオ、『鬱』の青田、がそれにあたると思う。遡れば、『笑う山崎』の山崎。そして本作『ゲルマニウムの夜』の主人公、朧。一括りにする共通項は何かと言えば、「カリスマ」だ。
カリスマの周囲に殉教的信奉者あるいは組員が集い共同体が構成される。この共同体が萬月さんが描く擬似家族の本質であり、宗教団体も暴力団も本質は変わらないと豪語する拠所と思われる。
『ぢん・ぢん・ぢん』で時田さんがイクオに問いかける。「有る」と「在る」の違いは何か。時田さんは、漢字の成り立ちから説き起こして「在る」は動かずにあること、と結論する。引いた例文は、「神は在る」。そしてイクオに問う、「イクオは、在るものか」と。これが萬月さん描くところのカリスマの条件であろう。
萬月さんはアウトローだが、決してアナーキーな無神論者ではない、と思う。『ぢん・ぢん・ぢん』では既存のモラルの殆どを叩き壊し、この作品では象徴的に現代のキリスト教を完膚なきまでに否定している。一見、神を否定しているように見えるが、それは考え違いというものだろう。萬月さんが求めているのは原始のジーザス、言いかえれば「絶対神」あるいは「唯一神」または「救世主」。そして、憂えているのは神の不在なのだ。
巻末のあとがきによれば、単行本に収録された3篇の中短編は、宗教を描く長大な物語のごく一部なのだそうだ。この作品の主人公朧は、萬月さんが既存の世界を全否定した上で登場させた「絶対神」たりうるカリスマ性を持った人物。全体主義に通じかねない思想は非常に危険なのだが、「羞恥心」と「自尊心」の哲学によって微妙なバランスが保たれる。
そして、単行本に同時収録された中篇「舞踏会の夜」に登場したジャンだ。作中で朧が指摘しているように、彼は「絶対神」朧の対極に位置する「悪魔」的存在として配置されていくような気がしているが、どうだろうか。「羞恥心」と「自尊心」の哲学の欠片も持たないカリスマ。これは恐ろしい。もちろん単なる殉教者かもしれないが。
この遠大な企みが完成した暁には作品群をまとめて『王国記』というタイトルが冠せられるらしい。果たして、萬月さんはどのようにして、どのような王国を築いていくのか。新たな地平に萬月さんの大いなる未来が垣間見えたような気持ちさえしているが、危険な道のりであることは間違いないと思う。祈るばかりだ。
萬月的世界観に侵食されるのは、弱者である自分に無上の快感を与えてくれるのだなぁ(^^;;)。
単行本には短編の「ゲルマニウムの夜」「王国の犬」と、中篇の「舞踏会の夜」の3篇が収録されている。「文學界」に掲載されたときは先の短編2篇で1篇を構成していたことを追記しておく。
紙の本
神を求めて
2001/03/29 10:40
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投稿者:桐矢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作。
思っていたのと全然違っていた。過激な性描写、暴力描写、そして芥川賞ではなく直木賞のほうが ふさわりかったのではないか…などという話を耳にしていたので、エンターティメント寄りのハードボイルド作品かと思っていた。
見事に期待以上の作品だった。舞台は、久里浜修道院兼救護院。社会の枠から外れてしまった子供達が収容されている檻。その檻の中で、主人公、朧(ろう)は、神に唾を吐く。
全然違う話なのに、遠藤周作の「深い河」を思い出した。あの作品でも玉ねぎをむいていく喩えが使われていたはずだ。神を求めて、見つけられず、それでもあがき続ける。深い河では、作者は、神寄りだったのだと思うが、この作品はどうだろう。花村萬月は、クリスチャンなんだろうか?
本書には、三つの中編が収録されている。著者曰く、
「三つの小説は、宗教を描く長大な作品のごく一部として書かれました。(中略)すべてを書き終えたときに、わたしは、この作品群に、「王国記」という表題を冠しようと思っています」