力学 みんなのレビュー

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投稿者：Eternal Kaoru　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

何か事故でもあったのか心配になるほど間違いが多く、なぜこんな間違いをするのか理解に苦しむ間違いさえあります。裳華房は良心的なので初版以来の正誤表をHPに出していますが、信じ難い分量の間違いがあります。
　単純誤植以外に内容面も「？」なところがあります。例えばp64の束縛力の説明：「垂直抗力や張力は物体を与えられた軌道に束縛するために生じる力だから、束縛力と呼ばれる。束縛力の特徴は、あらかじめ与えられるものではなく、物体が束縛運動をするために必要な加速度を与えるように決まるのである。」。
　この説明を理解できる学生はいないでしょう。第1文の「軌道に束縛するために生じる」って何？　目的用法の「ために」と読むのは不可能です。斜面や糸が意志を持つわけがなく、斜面や糸が「物体を軌道に束縛しよう」と考えるはずがないからです。そこで結果用法の「ために」と読むしかないのですが、それだと日本語として意味不明です。第2文はそもそも日本語として構文がおかしいですが（「特徴は～ということである」だろう）、内容もヘンです。束縛力が「束縛運動をするために必要な加速度を与えるように」するはずはありません。束縛力がものを考えるはずがないのですから。この文から「運動方程式を立てるときに束縛力は未知数である。束縛条件を考慮して運動方程式を解くと束縛力が求まる」（どんな教科書にもそう書いてあるはず）という内容を読み取るのは、普通の読者には不可能です。
　著者の本は何冊か読んできましたし、いずれも良書だったのですが、何でこんな本を書いてしまったのか、残念です。