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ウォーバーグ ユダヤ財閥の興亡 上 みんなのレビュー
- ロン・チャーナウ (著), 青木 栄一 (訳)
- 税込価格:2,750円(25pt)
- 出版社:日本経済新聞社
- 発行年月:1998.11
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紙の本
日経ビジネス1999/2/1
2000/10/26 00:15
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投稿者:矢内 裕幸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウォーバーグ家は、独フランクフルトのロスチャイルド家ほど有名ではないが、ドイツ系ユダヤ財閥の雄として、19世紀から今世紀にかけて世界の金融界をリードしてきた。本書は、ハンブルクのM・M・ウォーバーグ、ニューヨークのクーン・ロウブ、ロンドンのS・G・ウォーバーグといういずれも一流のプライベートバンクを率いた一家に関する、日本語訳にして1000ページにおよぶ年代記である。
物語は北部ドイツの美しい港町、アルスター湖畔のハンブルクに始まり、ドイツの詩人ハインリッヒ・ハイネが「若者、ある処女を愛す」と題した詩を捧げたという女性ザーラ・ウォーバーグ、彼女の2人の息子、ジークムントとモーリッツや、弟モーリッツの5人の子供たちの物語がつづられていく。
とりわけ、モーリッツの5人の子供たちの経歴はそのまま、経済発展と戦乱に彩られた今世紀前半の欧米史と重なり合う。第1次大戦後のベルサイユ条約締結時に、ドイツ側を代表して国益のために尽力したマックス、ニューヨークにわたって一家と盟友関係にあったクーン・ロウブで活躍し、米国の中央銀行に相当する連邦準備理事会(FRB)の創設に深くかかわったポール、イスラエル建国に奔走したフィーリクス、変わったところでは、20世紀の美術研究に独創的な方法論(図像学)を創始し、パノフスキー、ケネス・クラークなどの美術史家や哲学者に大きな影響を与えたアビーがいる。
著者のロン・チャーナウ氏は、執筆の意図をこう語る。
ドイツ人社会に受け入れられていると確信していたドイツ系ユダヤ人が、ナチの登場と共にそれがかりそめの幻想だったことを思い知らされ、「かくも賢明にしてかくも勤勉な民族が、なぜ自分たちの存在を脅かす死の脅威にかくも盲目だったのか」という謎を、ウォーバーグ家4代にわたって明らかにすることである、と。
しかし、その点については十分に成功したと言い難いのではないか。ドイツ系ユダヤ人とナチの関係について、独自の分析がなされていないからだ。著者の意図を実現するには、歴史をどうみるかという哲学が必要だが、著者には年代記作者としてのすばらしい技術はあっても、歴史家としての哲学にはそれほどの深みを感じられないように思えた。
とはいえ、それを除外すれば、この本は理屈抜きにおもしろい。教養ある欧米人が仏ニースの海岸やアルスター湖畔で寝そべりながら、ぜいたくな時間を堪能する——そんな読み物に仕上がっていることは間違いない。
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