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紙の本
植物の由来を遡ると太古の陸地の分布がみえてくる
2022/10/16 08:12
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の植物の地上分布について、他では見たことのないような「地質地学と植生を融合した分析」が詳細に展開されており、面白かった。
帰化植物について、著者の前川先生の書いた論文を読んで面白かったため、深入りした本を読んでみたくなり本書を手に取った。
昨今の植物の地上伝播に関しての類書を読んでいても、大陸移動説やプレートテクトニクスを除いては太古の昔から現代に至るまでの海面上昇や地表の隆起・沈降を最前面に置いて説明した書は少なく、申し訳程度に触れているだけで、読むたびに現在の世界地図ではなく、太古からの詳細な海陸地図や気候・海流に基づいて歴史的な議論をしないと真の太古の姿はわからず、空論でしかないと感じていた。高名な教授陣の書であってもこの傾向は強く、要するにそれらの皆さんも「知らないから書けない」だけかと納得していた。その点で前川先生の視野や慧眼は卓越しており、敬服した次第である。
本書を読んで目からウロコが落ちた点を少しだけ列挙する。
○房総半島と三浦半島は10万年前は一つの島があったため植生が似ている。
○日本の中部地方西部と関東地方北部には似た植物種が分布し、地理的にこれらに挟まれた地域の植生が両側と断絶している現象がある。これはフォッサマグナによる分離分断が起こった一つの証拠である。
○火山岩の残留放射能は動植物の突然変異を惹起する要因となる。
○朝鮮半島・中国大陸・欧州大陸アルバニア山中に分布するレンギョウは地磁気学から導かれる極地移動と古赤道分布説で説明可能である。
など話題は植生から地学へ、そして地球規模の大きさに拡大していく。
極地が移動すると赤道の位置がずれるが、その『古赤道』の痕跡は今の植生にも残る。アジアと南北アメリカ大陸をつなぐ『陸橋』、また日本においては九州沖縄と関東南部をつなぐ『黒潮古陸』が南の海に出現し植生を伝播させる。など、本書にはストーリーとしては「出エジプト記」や「日本沈没」も驚くようなSFばりの大仮説が次から次へと出現する。
余談ながら、将来 中近東由来の種子や葉の化石が南極大陸から発見されると、「方舟はアララト山ではなく南極に流れ着いた」という“前川説”が登場するかも知れない。それほど面白いノリで本書の論旨は展開される。
大先達である前川先生の本書に展開された数限りないアイデアが、「単なる思いつきレベルの仮説」にとどまらず、きちんと実証され後世に名を残すことをお祈りしながら読み終え、書を閉じた。
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