紙の本
小林泰三の四つの味をご賞味あれ。
2002/04/25 01:26
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投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小林泰三の4冊目の単行本。書き下ろしではなく、雑誌やアンソロジーに収録されたものを集めている。収録作4編のうち3編はテーマを与えられて書かれた作品。結果的に、怪獣小説、ウエスタン、サイコスリラー、ミステリーというバラエティーに富んだ構成になった、と作者自らあとがきで述べている。小林泰三の四つの味をご賞味あれ、というところか。
表題作「肉食屋敷」は、子どもの頃ワクワクして見たドラマの前半15分をイメージしたものだそうだ。山の上に放置された2台のトラックを何とかしてくれと依頼された公務員の「わたし」は、山の持ち主が住む研究所を訪ねる。壁から耳や唇や乳首が生えたその建物は…タイトルがタイトルなのでもしかしたら幽霊屋敷ものだと思われるかもしれないが、これは怪獣SFなのである。恐竜を復活させようとして、イリジウムを含む地層にDNA類似の有機物を探すというアイデアが、いかにもSF的なセンスを感じさせる。しかし、ドラマの解決編を書かず読者を安心させずに終わるセンスは、SFというよりホラー的なものだ。
「ジャンク」は西部劇風のSF。異形コレクション6 屍者の行進(廣済堂文庫)に掲載されたもの。人体が売買され、脳はCPUに、消化器はホースに、眼球はカメラに利用される、そんな異形の西部を描いている。次の作品「妻への三通の手紙」は、時間を遡りながら謎が徐々に明かされてゆくタイプのスリラー。種明かしをすると興ざめなので、非常に古くからある題材を扱っている、とだけ言っておこう。最後の作品「獣の記憶」は多重人格テーマのミステリ。冒頭から主人公が多重人格らしいことが明かされるが、実際のところ安直な多重人格ものをおちょくったようなプロットだ。描写はややスラップスティックで、主人公の狼狽ぶりがおかしい。
前半二作は肉体的フリークスを、後半二作は精神的フリークスを扱っている。小林泰三はフリークスを描くことが多いが、その視線はいつもフリークスに寄り添っている。残酷な描写が残酷なだけで終わらないのはそのためだろう。
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表題作『肉食屋敷』と、『ジャンク』、『妻への三通の手紙』、『獣の記憶』の短編集。
『肉食屋敷』
田舎の研究所で科学者がジェラシックパークに影響を受けて、太古の生物を蘇らせようとする話。
蘇るのが恐竜ではなく怪獣である所や、結末はやっぱり小林泰三だなといった感じ。
『ジャンク』
アンデッド(ゾンビ)と西部劇を一緒にした作品。
武器の剣の柄の部分に人の手首を使い、自分で握るのではなく柄に握ってもらったり、眼球をレンズに使ったり、脳を記憶媒体として使ったり。結構好きな世界観で未来的な印象も受けた。
結末に意外性があって面白かった。
『妻への三通の手紙』
本文は主人公の男が妻に当てた手紙のみで構成されている。
三通の手紙は新しいものから紹介される形なのだが、主人公が狂っている事がだんだんと強調されていく。面白い構成だった。
こんな男は本当にいるのかもな、と思えてリアルな怖さもあった。
『獣の記憶』
多重人格の男が主人公の話。
最初から主人公が二重人格であることが明かされていたりして、良くある多重人格者のサスペンス物とは、違った面白さがあった。
推理小説と思って読んでみるのも面白いかも。
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もうついていけない。(良い意味で)
この作者の想像についていけない。頑張って勝手にオチを考えてもそれの上をいかれちゃう、もう全敗ですよ。予想外の怪物の甦り描いた肉食屋敷。人が人を狩るジャンク。歪な愛の狂乱が凄まじい妻への3通の告白。規約破りの多重人格ミステリー獣の記憶。どれも逸脱で脱帽しました。
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★肉食屋敷★奇妙な屋敷にまつわる奇妙な話。
★ジャンク★異世界な西部劇。屍のリサイクル。
★妻への三通の告白★妻へのラブレター。狂った愛。
★獣の記憶★多重人格者が自分の罪に怯えるサスペンス。
作者得意の倫理と論理とペーソス。耽美でもなく汚らしくもない。ただ生々しいグロテスク。
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同著者の「玩具修理者」が面白かったので読んでみた。カテゴリはホラー短編集、かな。表題作は若干オチがベタ。2話目が世界観、ストーリー共に一番好み。
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”肉食屋敷”何で小林泰三はこんなに素敵な生々しい描写が上手なんでしょう。
生理的な恐怖の中にちりばめられた知的な恐怖が秀逸。
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題名からしてカニバリズムかと思いきや、普通のグロテスクもの。ストーリー展開もありがち。
同時収録のジャンクは好みです。この世界観の長編が読みたい。
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4つ中3つはオチが読めました。オチが読めると少し嬉しい(*´ω`*)この人の話はなんだか救いのない話やバッドエンドが多いですね。
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「ジャンク」は異形コレクションでも読んだ。面白いなぁ。淡々とした文章で示される残酷な現実。それを受け入れ狂う登場人物たち。
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2008年6月9日読了。「玩具修理者」の小林泰三のホラー短編4編を収録。どの短編も皮膚の下側で何かが蠢いてるような、異様なコワさ・迫力があり楽しめる。グロッとした表題作や「ジャンク」もいいが、構成が巧みな「妻への三通の告白」もイカしている。この作者の小説、もっと読んでみたい。
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肉食屋敷、ジャンク、妻への三通の告白、獣の記憶、の短編集。
田舎の環境課に勤めているわたしに、山に放置されているトラックを何とかして欲しいと苦情がくる。
その山の持ち主がいる研究所に行く。
研究所は陰気な雰囲気で、装飾は人の形を模していた。
奥へ進むと一人の男が座っていて、トラックに積んである劇物をこの建物にぶちまけて欲しいと頼んできた。
できないと断ると、男はこの研究所で行われていたある研究について話だした――肉食屋敷
わたしは今にも乗りつぶしそうな人造馬で急いでいた。
なぜなら荷台に30分前に死んだばかりの男の体が二つもある。
スクラップ屋に行けば、かなりの値で売れるはずだ。――ジャンク
僕が目を覚ますと、鼻血を出しているわけでも体から出血しているわけでもないのに呼吸のたびに喉から鼻に血のにおいが運ばれてくる。
何を発見しても動転しないように気を落ち着かせ、冷蔵庫の上に置いてある僕とアイツの唯一のコミュニケーション手段の波打った大学ノート「通信用ノート」を手に取った。――獣の記憶
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どの話も意外な結末に・・・楽しませていただきました。おもしろかったです。
ただ、グロイ系で気分が悪くなる方は読まないほうがいいかも。
私みたいにご飯食べた後でも平気で読める人がいいかもね。
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今まで読んだ小林さんの作品の中で1番気に入っている本です。
何度読み返しても飽きません。
ミステリーやサイコホラー等一冊で色々な話が味わえます。「妻への3通の告白」が狂気に満ちていて個人的に大好き。
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ホラー短編4編。捻りが効いていてミステリ要素もあり、面白かったです。
「肉食屋敷」怖かった。謎の生物から逃げる描写がスリリングで、ホラー映画を見てるみたいにドキドキしました。振り向いたらすぐそこに迫ってた、とかまさに映画的で「ギャー!!」と叫んでしまいそうでした。
どの話にも精神の異常を持った人間が出てきて、全体的に歪んでいるというか、狂気に満ちてます。正しいと思っていたことが結末でひっくり返ってすべてが崩れていく感じがすごくいい。
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グロと狂気の描写に長けた著者の短編集。
怪獣小説、西部劇、サイコスリラー、ミステリの4編。
どれも最後の一行まで目が離せない粒ぞろいの一冊。
「ジャンク」がお気に入りです。
小林泰三さん好きなのですが、
ちょっと精神的に余裕が無いと滅入る(笑)