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かつて「鉄道王」と呼ばれた根津嘉一郎の生涯を綴った一冊。
山梨県、根津家の次男として生まれた栄次郎が、根津家の戸主を経て嘉一郎に改名、実業家・鉄道王として数々の功績を残した81年の生涯について、ストーリー形式で描かれています。
■根津嘉一郎とは?
根津嘉一郎といえば、東武鉄道の初代社長であり、就任当時101キロであった営業距離を450キロ(私鉄最長)まで延伸し、グループ総売り上げ1兆円を成し遂げる、その大きな土台を築いた人物であり、これこそが、鉄道王と呼ばれる所以。
■東武鉄道だけではない、数々の経営手腕
そんな根津嘉一郎は、東武鉄道だけでなく、数々の会社経営に携わってきました。
例えば、、、
東京地下鉄道、秩父鉄道、南海電鉄、東京湾汽船、太平生命(現 日産生命)、松屋、富国徴兵保険(現 富国生命)、東京電灯、日本ビール鉱泉(三ツ矢サイダーやカブトビールを販売)など,
その他、政治の世界でも数えきれないほどの実績を残してきました。
■本書のここがおもしろい!
根津嘉一郎の波瀾万丈な生涯を追うことだけで、ストーリー的にはかなり面白いですが、加えて本書には、明治時代を代表する数々の著名人が登場します。
板垣退助、益田孝(三井物産設立者の1人)、福沢桃介(福沢諭吉の女婿)、渋沢栄一、松永安左衛門(電力業界のパイオニア)、伊藤博文、馬越恭平(ビール王)など。
これら錚々たる精鋭とのやりとり、駆け引き、綱引きも本書の読みどころの1つだと思います。
■根津嘉一郎の哲学
「不況の時こそ、でっかく借金して事業を拡大すべきなんだ。」
不況期には、資材と人件費が安くなるので、設備拡充は容易になり、そのために借りた金は、好景気を迎えると貨幣価値が下がって返済し易くなる、という理屈。
この独特の拡張理論と借金哲学により、東武鉄道をはじめ、数々の企業を成長させました。
■最後に
独立独歩、山梨の油屋の次男が明治を代表する実業家にまでのし上がったサクセスストーリー。
ハングリー精神旺盛な根津嘉一郎の生涯を綴った本書は読み応え十分です。
ぜひ読んでみては。