おしゃれでシニカルな短編の妙味
2006/03/24 22:32
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロアルド・ダールと聞くと何を思い浮かべるだろうか?
最近では映画「チョコレート工場の秘密」が空前のヒットとなって話題を呼んだ。
そう。ダールは童話作家でもある。「でもある」というのはその前に幾つもの顔があるからである。
ちょっと毒の効いたミステリー作家であり、短編物のエースであり、脚本家でもある。
映画『007は二度死ぬ』、ミュージカル『チキ・チキ・バン・バン』の脚本が実はダールのものだというのは案外知られていない。
さて、前置きが長くなった。
本書はミステリー9編が収められている短編集である。
どれを読んでも奇抜な発想と、あっと驚くオチ、しかもおしゃれな味わいがあってこくがある。
さながらビターチョコレートの味とでも言おうか、甘さの中の苦味がダール独特の「毒」を含んでいてこれが実に小気味よい短編ばかり。
オチは勿論言えないけれど、幾つかを紹介しよう。
本書の『執事』はどこぞの誰か、芸能界や巷の誰かにあてはまりそうな自称「ワイン通」と称する鼻持ちならない俗物を痛快に切ってくれて、とかく「通ぶる」人間、俗物どもには「毒」となり、読者には快哉となる一編。
ブルゴーニュのロマネ・コンテイと並ぶ世界最高の赤ワイン、あのナポレオン三世がパリ万博のために作らせたラフィトの‘45年を本書を読んで味わえるおまけがある。
一方、童話作家の顔を持つダールの真骨頂とでも言えるのが『王女と密猟者』『王女マメーリア』。
これは大人のための童話とも言える。
さて、最後に愛書家、読書家、古書マニアの読者の耳目を集めそうな一編が『古本屋』。
ロンドン、チャリング・クロス街に稀覯 ( きこう ) 本の古書店をかまえるウイリアム・バゲージ。店内の本が売れようが売れまいがきにかけないふう。実は彼は億万長者。仕入れや販売に手腕がありそうにもみえない。しかし、ある日の顧客の請求書には高価な古書がずらり。
顧客はすべて資産家ばかり。なぜか?
この先の最も面白い部分は読者がお読みください。
あっと驚くトリックと妙味にうならない人はいないでしょう。
本書はダールのおしゃれでちょっとシニカルな短編の妙味を堪能できる一冊です。
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投稿者:H.N - この投稿者のレビュー一覧を見る
シンデレラは幸せに暮らしました。ここで通常の物語は終わるのですが。ダールはその後的な物語を描いています。美しさと権力を手にした女は、いったいどうなるのでしょうか? シンデレラに対する強烈な皮肉となっている、表題作を含め九編の毒にあふれた話を楽しめます。大人に向けたおとぎ話を楽しみましょう。
微笑を誘う物語たち
2001/07/23 12:29
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユーモアと残酷さが魅力のロアルド・ダールだが、この本に収められた9つの短篇はそれほど毒が強くない。むしろ後味爽やかな感動作の方が多いくらいである。ミステリーと言うよりミラン・クンデラ的な短篇集という感じなので、ハヤカワ文庫に入っているのがちょっと面白い。
なにしろ最初の「ヒッチハイカー」から手を叩いて小躍りしたくなるほど痛快だし、「アンブレラ・マン」「“復讐するは我にあり”会社」「古本屋」などは実際にこの手で一儲けしようと思えばできないことはないようなビジネスアイディアを提供してくれているのである。
そして、クラシックの交響曲を聴きながら思わず指揮者然として手を動かしてしまったことのある人なら共感せずにはいられない「ボティボル氏」は、読後にベートーヴェンのピアノ曲「皇帝」を聴きたくなることうけあいだ。
最後の2篇は少し教訓くさいが、やはりロアルド・ダール、グリム童話とはひと味違うのであった。
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不可思議な話しに引き込まれていきます!
何気なしに手に取ったんですが、満足しました! 著者の童話にも突入してみるつもりです☆
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ロアルド・ダールの(子供用でない)小説の短編集。表題も面白かったけど、最後から2つ目の「王女と密猟者」がよかった。
アスパラガスみたいな男(w)の話はなんとなくオー・ヘンリーを思い出しました。ダールってこういうのも書いてるのか・・・。
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名手ロアルド・ダールの短編集。
「あなたに似た人」が有名に、童話も多く「チョコレート工場の秘密」の原作者でもあります。
これは9編収録。ハズレ無し!です。
読みやすく、興をそそり、スマートで、笑えて、ちょっとだけ毒がある。
「ヒッチハイカー」は、作家が乗せた男が絡んできて、それに答えつつ困惑する。まさか犯罪者では?
と妙なことになりそうになるが…笑える結末。
「アンブレラ・マン」は雨の日、傘を巡って。急な雨の降った日、母娘に上等な絹の傘を差しだした品のいい老人は?妙な男性の行動を目撃する二人。
「ボティボル氏」はアスパラガスそっくりで性格も内気なボティボル氏。音楽が好きな変人がある楽しみを見つける。
器量はあまり良くないが音楽好きな女性との出会いが楽しい。
表題作は、大人の童話といった趣き。
17歳の誕生日、王女マメーリアは、鏡に映った顔に愕然とする。不器量な少女が一晩で美女に変身していたのだ。そして…?
生まれつき不器量な人間に対する共感や、頭を使って工夫する人への人間愛が感じられますね。本人はなかなかいい顔をしているし、女優と結婚しているんだけど、すごく細長いアスパラガスみたいな頭なので、あだ名は付けられたでしょうね。
イギリス育ちだが両親はノルウェイというから、そのせいか?
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短編集だけど、「王女・・・」が秀逸。さすが表題作。「ボティボル氏」はまさにcon brio夢マロ! 老舗百貨店のチョコ詰め合わせのような、良い1冊.
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ロアルドダールが大好き!
こどもむけのお話も好きだけど、
こういったちょっと大人むけの
ダークな短編が、ぴかいちだと思う。
「キス・キス」もよかったけど、
これもまたよし。
ううん、ブラックだ。
そして、好きだあ。
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東灘図書館で立ち読み。
タイトルの「王女」にひかれて。短編集。
すとんと落ちる感じのストーリーでした。
美を手に入れた王女は傲慢になってしかりだよね。
けれども、それでは天罰が下ってしまうのだ。
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ロアルド・ダールの短編集。
童話的というか、ささやかに教訓的。
オチの読めるものもいくつかあるが、表題作と、「傘」にはゾクリとする凄みがあった。
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「ワインと酢が出てくる小説なんだったけ」と記憶をさらうと,この本に所収の「執事」にいきあたった.たしかにこれ読んだことがある.他に「ヒッチハイカー」と「アンブレラマン」,「ボティボル氏」を読んだ.
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「チョコレート工場の秘密」「マチルダ」「こちらゆかいな窓拭き会社」の童話を出しているダールの大人向け短編集です。
「チキチキバンバン」「007」の映画の製作にもかかわっています。
そんな機知にとんだダールの話らしい展開です。
最初の「ヒッチハイカー」は、前半はダールらしくないなという気もしましたが、後半になると、なるほどという展開でした。
短編集なので、一つ一つ、他のダールの作品と比較しながら読むことができます。
ヒッチハイカーは、「父さん狐」に近いでしょうか。
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けっこうオチが読めてしまう短編集。
タイトルになっている「王女マメーリア」の話は最後でちょっと切なかった。
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ダールは、素晴らしい、というのは個人的な偏愛だろうか。
たしかに人によっては、小事件ばかりで、ばかばかしい、と思われる小話が多いかもしれない。
それでも、人を突き放すようなブラックジョークがたまらない。
『ボディボル氏』は人生で一度も自分で成功をつかんだことのない資産家の男の話。ある日、ラジオから流れるオーケストラの指揮者のまねごとをしていうちに、自分を偉大な作曲家と思えるようになって…。
『復讐はわれにあり.Inc』は、コメンテーターの餌食になった著名人たちの復讐を肩代わりする会社を思いついた男たちの話。
表題作『王女マメーリア』は、ある日目覚めると、不器量な王女が目もくらむような美女になる。たちまちその美貌は力となり、彼女の美貌に群がる民衆を串刺しにしたり、煮立った鉛を頭上から浴びせることに快楽を見出していく・・・。
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翻訳物のショートショート集って、ジョークのツボが日本のそれと微妙に違っていたり、文章が分かりにくかったり、面白さ・趣味のバランスが玉石混交だったりするものですが、この短編集は9作ともハズレが無く面白かったです。他人にオススメしやすい。表紙の絵、王冠とカキで奇妙な絵柄ですが読めば分かります(笑)