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紙の本

性愛に自覚的であろうとすることの「痛み」

2001/10/26 16:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:森亜夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本著は、著者藤本由香里の性愛に関するスーパーマーケットの感がある。評論っぽい体裁を取っていても、自己の性愛感を軸に展開される独自の「性愛論」は、読者の心にある種の「痛み」を呼び覚ます。日常をただ緩慢に生きるだけでは、思い出さない「痛み」。女性ならば、一度は経験したことのある「性」に対するあこがれと、忌避感。この微妙な感情をもとにして著者は、あるときはまんが、あるときはAVを題材にして「性愛」を正面から論じていく。中ほどには、実験小説と銘打たれたエッチ小説があり、ここでもスーパーマーケットの面目躍如である。
 個人的には、小説はあまりいただけないが、相変わらず藤本のまんが評論、まんが分析の力には圧倒される。本の作りとして、一冊まるごとまんが評論だけ、小説だけ、AV論だけというふうに読みたかったと思うのは、無理からぬことだろう。それ以外は、とてもおもしろく読める。が、やはり著者の私的部分が出すぎているのがどこか「痛々しい」。
 また、共著者の白藤は、藤本のペンネームだと思われるがどうして、あえて二人の共著という形にしているのか理解に苦しむ。東電OL殺人事件の分析のところにあったように、昼の藤本と、夜の白藤と性に対するスタンスを変えて生きているということなのか。としたら、このような本を書いてなお、藤本の「痛み」は解消されていないのではないか。昼と夜で生き分けるのでない生き方を提示してほしかったと思うのである。

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2004/10/31 18:09

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2005/05/29 10:28

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2006/04/29 17:54

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2020/06/20 07:09

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