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[作品]
1961年発行(オリジナル)
1999年 平凡社
[内容]
1942年、スウェーデン人探検家によって南太平洋に存在するハイアイアイ群島で発見された、鼻が異常に発達しその鼻で移動や捕食を行う世にも奇妙な生物“鼻行類”。本書は、残念ながら1957年に核実験によって引き起こされた地殻変動で唯一の生息地であるハイアイアイ群島が海没、消滅したことによって絶滅してしまった鼻行類の生態をドイツ人博物学者ハラルト・シュテュンプケがまとめた一冊。
[感想]
本書は、その全てがフィクションである(と、世間では言われている)。鼻行類なる生物は歴史上確認されていない(おそらく)。本書が発表された当時、ウソかホントかこの生物の存在を信じた人が結構いたらしく、信じた人の中には専門家もいたというのだから驚きだ。しかし、専門家の見地から事細かに書かれた鼻行類の生態やイラストはかなり精巧に作られており、その都市伝説もあながちウソじゃないように思える。それほどよくできている。
本書の様なものが書かれた経緯として、当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴールへの風刺であるという説があるらいしが、詳しいことはわからない。個人的に思うのは、風刺にしては少し手が込みすぎてるような気がしないでもない。気軽な気持ちで始めたが、やっている内に楽しくなってしまった口か?それとも、本当にいたのか?今でこそ、映画やゲームなどでこの手の創作生物は珍しいものではなくなったが、本書が発表されたのは50年も昔である。そういった意味で、人間の想像力というのは無限大であるということを感じる一冊である。
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読書録「鼻行類」5
著者 ハラルト・シュテュンプケ
訳 日高敏隆、羽田節子
出版 平凡社
p7より引用
“しかしその後、この動物群は哺乳類、いや脊椎動物すべてを通
じて、これまでまったく知られていなかったような体の構造原理、
行動様式、生態の型を示すがゆえに、独特な意味をもつことにな
った。”
動物学者である著者による、今は無き太平洋の諸島に生息して
いた奇妙な動物の一群についてまとめた学術論文。
花で歩き回るものからピョンピョンと跳ね回る種類まで、細密
な図版とともに記されています。
上記の引用は、序論での一文。
一通り読んでみたところ、確かに独特。これだけ独特な生物につ
いて、詳しく調べあげて書かれていても、研究のほんの一部だそ
うです。多くの資料は核実験による地殻の歪みによって、群島全
体もろとも海中に没してしまったとの事。
科学の大きな発見や成果が科学の実験によって失われてしまった
のは、なんとも残念なことです。
図版の鼻行類の顔が、なんとなくおっさん顔に見えて、そこも
面白いところです。生物が好きな方なら、きっと楽しめる一冊で
はないかと思います。
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ようやく読めた、あこがれの本。日高敏隆さんの訳者あとがきに「理論動物学として抜群のものである」とされています。生物の本を読むといつもおぼえる、この生き物を突き詰める人生を歩むべきだったのか、という感情こそ抱かなかったけど、もしかして僕にも、鼻行類に続く新しい生き物が見つけられるのでは、と、今までにない興奮を覚えています。
いつもだったら、「もうちょっと若かったら、鼻行類の研究者になるね」っていうところだけど、今回は、ね…!
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いるかもしれない、いや、これはない、でも、もしかして、いや、いるんだって、いや、ムリムリ。え?いるんでしょ?
鼻を、尻尾を、どう使うかあらゆる可能性の考察。
いや考察じゃなくて観察ね?
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生協の書籍部で一目ぼれして購入。
読んでいる途中鼻行類が哺乳鋼というよりむしろ昆虫に近しいようにも思えて想像力のなさを恨めしく思った。
絶滅してしまったのが大変に惜しまれる。
参考文献一覧も大変参考になったし、
訳者たちの評から本文とはまた異なった新たな視点を得ることもできた。
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南太平洋のハイアイアイ諸島で発見された鼻で歩く謎の哺乳類。その驚くべき生態を緻密な図とともに紹介。世界の動物学者に衝撃を与えた世紀の奇書、ついにライブラリー化!
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http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?amode=11&bibid=TB10070821
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すでにかなり有名な本ですが、ようやく読んでみました。
「鼻行類」という、哺乳類についての本です。
一応フィクションのはずなんですが、すべての資料がすでに散逸してしまっているため、フィクションともノンフィクションとも言えないとかいうそういう話。
基本的には学術書の体をとっています。
そのやり方が完璧すぎたので、当時いろいろと物議を醸したようです。
実際読んでみても、しっかりやり過ぎというぐらいにやってます。
参考文献までもがしっかりネタになっているために、信じてしまう人が多々出てくるのは仕方ないかなとも思います。
あとがきによれば、フランス語版で序文を大物動物学者が書いてみたり、サイエンスにこれに関する記事が載ってみたりするなど、これは本当のことではないかと思わせる状況が多々発生していたみたいですね。
ここまでやれば、しっかりした学術書に見えてくるので、素晴らしい作品だと思います。
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奇書。実際にはいない謎の生物を本当に大真面目に研究し、その生態が詳しく書かれている本。頭がおかしいなあ。
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世に言う生物系三大奇書の中の一書。一見正統派の動物学の学術書。鼻行類(目)とは、1941年に日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人により発見されたハイアイアイ群島に生息していたとされる哺乳類。発見当初は原住民もいたが、発見者により持ち込まれた流感により絶滅。
哺乳類の場合、種レベルでの発見でも大騒ぎだが、鼻行類はその上の属の、さらにその上の科の、さらにその上の目レベルでの発見。しかもその外見と生態も非常にユニークということで、本書出版は大反響を呼んだ。
極めて学術的なスタイルの書籍ながら、退屈な記述が長々と続くこともなく、内容は変化に富み、かっこかわいい銅版画による各種鼻行類のイラストとあいまって大変楽しい書物になっている。
鼻行類は名前が示す通り鼻で歩く動物。どの種も鼻が非常に発達している。
最も原始的な種は、ヘッケルムカシハナアルキ。この食虫目(モグラなど)から進化したと考えられ、唯一四足歩行する鼻行類。捉えた獲物を食べるときだけ逆立ちし、鼻で体を支える。
ハナススリハナアルキは、長く伸びた鼻の先から粘着性の強い鼻水を水中に垂らし、小型水生動物を捕獲する。
ミジンコラッパハナアルキは、水中に住み、漏斗状の鼻で水面に吸い付いて体を支え、プランクトンを食べる。
ここまでは、同じく大陸から切り離されて独自進化を遂げることでさまざまな環境に進出した単孔目、有袋類に似ているが、鼻行類が凄いのはここからで、なんと空を飛ぶ種類までいること。それがダンボハナアルキで、大きく発達した耳を使い飛翔することができる、というくだりまで差し掛かったところで、本書はだんだんファンタジーの世界に入り込んでいく、気がする。
こうした愛すべき鼻行類、今でも何か見られるものはあるのか、そもそもハイアイアイ群島とはどの辺にあるのか?という疑問でいっぱいの読者に対する答えはあとがきに用意されている。
なんと、50年代に秘密裏に行われていた核実験(諸島の200km先)で、下級職員のミスから地殻に歪みが生じ、全島が
海面下に没してしまったらしい。膨大な資料と剥製が保管されていたハイアイアイ・ダーウィン研究所も永遠に失われてしまった。不幸中の幸いは、本書の著者がこの直前に短くまとめた文章を残していたこと。
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ドイツ人 頭が悪いドイツ人(褒めてます)てゐるのか・・・
前の「学術的で小難しいタームによる分析で「屁こいて空を飛ぶ生物」の解説をする」と言ふのはカットされてゐる。
表紙のaハイアイアイ群島にランないけどbウマノアシガタの仲間の蘭に大変そっくりなのでc鼻が、花に の生き物ランモドキの脇に衒ひなくこっそり「三対の羽を持つ虫」が飛んでる。
おっぱい(人間の巨乳の女性のそれに酷似!!)を付けた種類と、それへ共生関係を結ぶ種類がもふもふする、とか、
鼻で地べたを掘るとか、トレモロ奏でるとか、すごい大嘘こきまくり。
しかも土着のトガリネズミはユーラシアとかのやつを別種なんでは、とかこく。ある種すげえ(二十一世紀になってからは「アフリカモグラ系」と「ユーラシア・北アメリカモグラ系」がゐる説が主流になってゐる)
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架空の哺乳類、鼻行類についてのパロディー論文。
古き良き王道の動物学の語彙で真面目にふざけて尾行類の種について記載し、その生態学的・分類学的議論を引用している。
特に典型的鼻行類から扁形動物へのいわゆる中間種を示した上で、後者が前者から退化的に系統発生したとする大胆な説が打ち立てられているのは興味深い。この説が、いかにも系統発生の教科書に載っていそうな話でありながら、あまりに嘘くさいことには、多くの生物学徒が同意してくれることだろう。巻末の垂水雄二氏の解説では、この点に関する専門家の賛否両論も紹介されている。
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あまりの奇想天外さに びっくり。
古代の人が、龍やグリフィンなどの空想動物を作り上げたのとは、ちょっと違う。
2007/8/23 借りる。9/6 読み終わる。
内容と目次は →
内容 :
1941年に発見されたハイアイアイ群島。
そこでは鼻で歩く一群の哺乳類=鼻行類が独自の進化を遂げていた。
鼻行類は哺乳類の特殊な一目とみなされており、その名のとおり鼻が特殊な構造をしているのが特徴である。
某年の核実験によるハイアイアイ島の消失とともに絶滅した。
多くの動物学者に衝撃を与えた驚くべき鼻行類の観察記録。
1987年日本語版出版後 たちまち話題となった名著の再刊。
著者 : ハラルト シュテュンプケ
1908年生まれ。ハイアイアイダーウィン研究所博物館長。
カール・D.S.ゲーステの名で「シュテュンプケ氏の鼻行類」、ゲロルフ・シュタイナーの名での作品等がある。
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1941年に日本軍収容所から脱走した捕虜が漂着した、ハイアイアイ諸島に生息していた「鼻で歩く哺乳類」、「鼻行類(びこうるい)」についての研究書。なお、ハイアイアイ諸島は核実験により沈没している。ハナモドキ属の生態が興味深かった。
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1941年、日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人のエイナール・ペテルスン=シェムトクヴィストが漂着したのがハイアイアイ群島だった。彼がそこで発見した「鼻行類」と呼ばれる動物群は、それまで全く知られていなかった独特の体の構造原理・行動様式・生態の型のために、当時の学会に強烈な衝撃を与えた。本書は、鼻行類の研究者であるハラルト・シュテュンプケ氏が残した、14科189種の観察記録を収録したものである。まず総論として鼻行類の一般的特徴を述べたあと、各属の生態について記述している。
鼻行類の最大の特徴は、その名の通り彼らの「鼻」にある。例えば、ミツオハナアルキ属は、肥大化した鼻によって逆立ちさせた体を支持し、高く立てた尾から出す分泌物に引き寄せられた昆虫を捕まえて食べる。また、ハナススリハナアルキ属は水中に「鼻水」を垂らし、この鼻水の糸にくっついた水生動物を釣り上げて捕食する。鼻行類の中で最も美しいとされるのが、フシギハナモドキである。彼らはその発達した鼻器を花の花弁に擬態させ、そこから発せられるバターミルクの香りに昆虫が誘き寄せられてくると、鼻器を急にバタンと閉めて捕獲してしまう。
彼らの多種多様な「デカい鼻」にはなんとなく可笑しみがあるが、キュートと言うにはその生態は些か個性が強すぎる(正直、実際に動いているところを想像するとちょっと不気味・・・)。僕には生物学の素養がないので細かい専門用語はよく分からなかったのだが、挿絵をパラパラと眺めているだけでとても楽しい。生物に詳しい人は、きっとより深いところまで本書の面白みを読み取れるのだろうと考えると羨ましく思う。
そんな奇妙な鼻行類だが、動物園にも居ないし、図鑑でも見たことがないのは何故だろうと思う人もいるだろう。実は残念ながら彼らは、1957年に某国が秘密裡に行った核実験が地盤に与えた影響により、現地に設置されていた研究所も含めて群島ごと海の底に沈んでしまったのだという。そのため、鼻行類の個体が全滅してしまっただけでなく、本書以外の研究資料も失われてしまったのだ(Wikipediaによれば、わずか数点の剥製は辛うじて現存しているようだ)。
科学ジャーナリストの垂水雄二氏による解説も興味深い。上記の経緯のため、現在の生物学者が入手できる鼻行類に関する資料は本書しかなく、当然のことながらその信憑性が疑われたこともあったという。
"こういう事態に当たって、動物学者がとるべき方法は二つしかない。一つは、自分で標本を調べたり、実地で生態調査をして真偽を確かめることである。(略)しかし、鼻行類の場合、標本は一つも残っていないし、実物は生息環境もろとも消えてしまったとなれば、この方法は使えない。(略)
そうなると、残された方法は一つしかない。すなわち、この記録そのものをひとまず事実としてうけとめ、動物学的にみて正しいか、矛盾があるかどうかをつきとめていくことであり、さらにいえば、この本から学ぶべきことがあるかどうかを問うことである。(p.140)"
実際に、この立場から幾人もの著名な生物学者が論評を加えているという。僕なんかが言うのは非常に烏滸がましいのだが、この事実に、真摯な科学者���こうあるべきということを教えられた気がした。
※本書は、生物学の専門書の体をとったフィクションなので念のため。生物系三大奇書の一つにも数えられているそう(他の2冊は『平行植物』(レオ・レオニ)と『アフター・マン』(ドゥーガル・ディクソン))。本書と似た趣向の『フューチャー・イズ・ワイルド』という、人類消滅後の未来の地球に生きる動物・植物を想像した本を7,8年前に読んだことがあるが、この本の著者もドゥーガル・ディクソン。