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ものすごいタイトルだなと思う。だが最後まで読むと、なぜこのような極端なタイトルを付けたのかがよくわかってくる。日本を代表する演出家が、自分の演劇官について語ったエッセイである。他に、何人かの人の、蜷川氏について語るインタビューが載っている。どれも興味深い。
もともと彼の演出する芝居は好きである。と言っても最近はあまり見る機会がないので、ちょうどこのエッセイで過去のこととして書かれている部分しか知らないことになる。だから、僕の心をあれだけ揺さぶった舞台が、どのような精神に支えられて作られたのかがとてもよくわかる。なによりも、・脚本・観客・劇場・役者やスタッフという芝居作りに欠かせない要素それぞれについて、この演出家がどれだけ謙虚であり、誠実であろうとしているかがはっきりと伝わってきて、それがなによりも感動的である。
ほんとうにちっぽけな世界ではあるけれど、日常的に演劇というものに関わっている僕さえも、何か頭をどやされたような気持ちにしてくれた。演劇に関わりのない人にとっては少しマニアックな内容かもしれないが、筆者の強さのようなものだけは感じることができるに違いない。
2004/8/15