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アドルノの著作については、『マーラー音楽観相学』の一部を読んで、その難解さに辟易して以来、敬して近づかぬようにしていたのだが、「音楽社会学」という耳慣れぬ言葉に興味を持って、よせばいいのにこの本を購入してしまった。
しかし、この本に限っては、相当に訳者の力が大きく与っているらしく、なんとか最後まで読み終えることができた(どれだけ内容を理解しているかというのはまた別の話)。
音楽が社会からどのような影響を受けているのかということについての考察は、どこにその手がかりを求めるかということから始めなくてはならず、かなり困難な考察になるであろうことは想像に難くない。例えば消費社会との関わりとか、時代精神の反映等々、間口を広げればいくらでも広がるように思う。この著作では、それらの「間口」についてアドルノなりの示唆が示されていると言えようか。
それにしても、なんと言い回しの難解なことか。「訳者あとがき」によれば、これはどうやらアドルノ自身のドイツ語の記述そのものが難渋であることに由来しているらしい。そんなドイツ語をなんとか読める日本語に訳してくれた訳者に敬意を表したい。