電磁現象と逆問題 みんなのレビュー

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投稿者：ブックレビュー社　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　「逆問題」とは何だろうか。本書の前書きには，「観測から得られた限られた情報から，その源となる像（イメージ）を再構成する営み」とある。くだけた言葉で表せば，ふたが閉じた箱の中身を，そこから聞こえてくる音や匂いから判断する問題，とでもいおうか。さまざまな自然現象から，その根底にある原理・原則を導き出すことも，逆問題の一例といえる。
　編者も指摘するように，大きくとらえればこれまでの人間の営みの多く，とくに理工学系の学問の積み重ねは，この問題を解き明かすための努力の連続だったとも言える。もちろん本書が取り上げるのは，そのごく一部に過ぎない。
　本書は電磁力の応用に関する工学書のシリーズの一冊であり，取り上げる題材は原子炉の非破壊検査などに限られる。もっともその根底にあるのは，逆問題に取り組むためにこれまでに開発されてきたさまざまな工学的・数学的なツールであり，他の分野への応用も期待できるだろう。理工学系の大学生向けの一冊。
(C) ブックレビュー社 2000