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「経絡テスト」とは、福岡大学の向野義人先生が体系化したものです。おそらく経絡というよりは、経筋を扱った治療方法であると思われますが、それは、本書の中において、「操体法」が少し引用されていることからも分かります。いずれにせよ、「経絡テスト」という一つの明確な指針を示しているので、内容としても、臨床としても、とても分かりやすく、実践的なものになっています。
身体に張り巡らされた経絡と同じ走向部位で、現代医学で言う筋肉の連携部位のつながりを経筋といいます。経筋の症状は、スポーツ障害をはじめとする、運動器の疾患全般に出てくるものなので、こういった疾患に対してはより効果を発揮すると思います。しかし本書の中では、運動器疾患の他に鼻づまりや、生理不順、冷え症なども扱っているので、経絡テストおよびその治療によって改善される症状も多いのではないかと思います。そういった意味においても、とても実践的です。
古典的な治療をしている立場から考えますと、本書の提唱する経絡テストは、経絡の走向を意識することにつながりますので、どこの経絡の調子が狂っていて、どこの臓腑の正気が虚しているかを診察に使用することができますし、実際に治療にも応用することも可能ではないかと思います。本書の作成には、中医学の先生も入っているので、古典的な治療の概念と、経絡テストでの考え方の整合性も試みており、その応用の範囲にも広がりがあり、とても興味深いものがあります。古典で頭がいっぱいになったとき、少しこのようなものを読んでおくと、また新鮮な知識を得ることができると思います。