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モノが消えて、モノに関する記憶が消えていくのが当たり前の島の中のお話。
当たり前のように記憶が消えない人がいて、
記憶が消える人を気の毒に思い、思い出させようとあれこれ意見したりする。
うーん。どうだか。普通に苦もなく消えるんだったら、消えたらいいじゃん。
楽しい記憶まで消えちゃうけどさ。消える人たちが別に困ってるわけじゃないし、
そりゃあの環境で記憶が消えない人はキツイだろうと思うけど。
自分にとって大事なことだからって、人にも押し付けようとするのは、どうかと。
いや、そういうレベルの話じゃないんだろうとは思うけど(笑)
とにかく最初から最後まで、シーーーンとした美しい物語でした。
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すかすかのこころをかかえても、なんとか生きてゆけるわ。なくしてしまったものがなんなのかさえもうわからないんですもの。
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SF仕立てのミステリなのかな、と思って読んでいたらファンタジーでガッカリ。
秘密警察のあらましについて説明してくれれば100点をあげたいくらいなんだけど。
とくに食事や生活の中の煩雑なこと、そういったことをていねいに描いているのが印象的。
じわじわと迫り来る喪失感、それは他のどこでもなく日常から訪れ、日常を食い潰していく。
小川洋子といえば、作中作のような狂気まじりの偏執的な愛を書くイメージがあったので、希望あるラストは意外。
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気の抜けたコーラ的な読後感。
文体や日常生活の描写は相変わらず素敵なんだが、主人公が消失に対して拒否感をもってないからか、怖くない。
小川洋子は「恐怖の美しさ」みたいのが好きなんだがなあ。
でもほのぼのしてる部分もあるんで、まったりしたい時は呼んでいいのかも。
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美しい
少しずつ失っていく感覚
私もこんな風に
痛みもなく
当たり前のように
自分を失いたい
って思える
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静謐、という言葉がとても合う小説でした。どんどんいろんな記憶が失われていく。最初はオルゴールとか、写真とか、薔薇とか。そして鳥や、春を失い、次第に足や手まで・・・。失われたものに対する人々の描写がすごく丁寧なのが良かった。ある瞬間何かが失われたときにふと感じる寂しさ。失われたものを見るときの距離感。そういう描写がすくステキなんです。記憶を失っていくということを、島の人々が恐怖を感じずに受け止めているので、不思議な雰囲気がつくられているんですよね。果たしてそれは幸せかどうかはともかく、そうやって少しずつ失われていき死んでいくのもいいかもしれない、と少し思いました。
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外の世界から切り離された状況にある島では、少しずつ「もの」が消え去っていく。
消失のおこる順番などに基準があるのかないのか、わかる人はいない。
消失がおこると、それは島に住む人間にとって無意味なものとなり、現存する「もの」はすべて廃棄され、やがてその「もの」についての記憶や感情すら、人々の中から消えていく。
例えば、消えたものがフェリーならば、今あるフェリーは全て壊され、新しく作られることもなくなり、作るための技術とその方法も失われ、それに関わる仕事をしていた人はすべて別の仕事につく。しかし、それについて何の感情も生まれない。辛いとも嬉しいとも、誰も思わない。
しかし、ごくまれに、その消失が起こらない人もいる。そういった人は消失が起こった後も、消えた「もの」がもつ意味もそれにまつわる記憶も無くすことはない。なぜ、そうした人がいるのか、消失が起こる人と起こらない人との違いは何なのか、それを知る人もいない。
けれど、島にとって消失は絶対であり、消失が徹底されるよう監視し、また率先して消去を行う秘密警察が存在する。
消失の起こらない人は秘密警察による取り締まりの対象となっていた。
主人公は小説家で、彼女の母は「消失の起こらない人」だった。
主人公は母から消失したものを見せてもらったり、それについての話をきかせてもらったりしたことがある。けれど、「消失の起こる普通の人」である彼女は、母がそれらをどれほど大切に扱おうと、母と気持ちを共有することはできなかった。
ある日、主人公は、彼女の小説の担当者であるR氏もまた、消失の起こらない人であることを知る。
主人公は昔からの知人である一人の老人の協力を得て、R氏を自宅の隠し部屋にかくまう。
この小説は、そのR氏をかくまう日々の生活と、どこまでも止まらない消失と、それらを巡る主人公と老人とR氏の感情のふれあいと行き違いを描写して、やがてR氏が解放されるところで終わります。けれど、この小説は推理小説ではないので、消失がおこる原因等が解き明かされるわけではありません。
謎にきちんとした解決やオチを求める人には不向きな話。
私はどちらかというとそういう人なので、小説の中で放置された謎があるともやもやしちゃうんですが、この話は大丈夫でした。
どうしてこれが起こるのかという原因を求めようという気分にはならない小説です。
ただひたすら、どうしてこう思うのかという感情の動きを追っていました。
細かく描かれる暮らしの描写の中に浮かんでいる心の色を感じる(感じた気分になる、かも)のが、気持ちよかった小説でした。
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23歳ころ読む。
「博士の愛した数式」で有名な小川洋子さん。
彼女の本全部を読んでいるわけではないけれど
これがダントツおすすめ。
何かが失われていく。
記憶とは何か。
SFです。
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あって当たり前のものが
ひとつひとつ消滅していく世界・・・
小川さんの作品らしく、とても静かでした。
もちろん、ラストでどんでん返しがあるでもなく
淡々と「無」となって終わっていきましたが
読後には、淋しさと温かさの中間のような
余韻が残りました。
もし、今、この世の中に「写真」がなかったら
私の中にある記憶もスカスカの空洞かもしれません。
あんなに大好きだったひいおばあちゃんの「声」を
どうしても思い出せない自分に気がつきました。
思い出そうとすら思えないような忘却を山ほど抱え
人は生きていくんだろうなぁ。。。
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大好きな作品のひとつです。ドキドキするし、とても切ない。大事なものが"消滅"してもそれを受け入れてしまう。うーん、どうかな。2008.10.3読了
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こわい。
どんどんないろいろな言葉がなくなっていく。
それがあまりにも知らない内にくるので。
本の中のこととは思えない。
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新潟の少女監禁事件を思い出しました。 事件の発覚より先に書かれたのだとしたら、なんだかすごいなと思いました。 お話の本筋のオチが面白かったです。
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儚げで危うげで美味で、同時進行するもうひとつの物語の匂いも微かにかんじられて。無に向ってゆくどうしようもなさがたまらなくいとおしい。
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小さな街から、ときどき何かが消えるお話。
消えることは天災のような存在で、
誰にも止められない。
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記憶狩りによって,色々なものがある日突然消えていく。
そこに不便を感じない,その島の人たち。
消えたら,もうそれについて思い出すことができなくなる。
たとえば,バラが消えたら,次の日には家の中にあるバラを皆が川に流さずにはいられなくなる。
その中に,記憶が消えない人たちもいて,その人たちは魔女狩りをされる。
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小説家の主人公,ある日小説が消えたけれど,愛する人に書かなければだめだと言われて,なんとか書いたその小説が素敵だった。
最後は自分さえなくなった。
考えさせられる小説であった。小川洋子の小説の中で一番好きかも知れない。