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紙の本
免疫学によって起きた知のパラダイム・シフト。異分野の知的精神が出会ったときの白熱が面白い
2000/10/06 15:22
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投稿者:池山 栄一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は免疫学者・多田富雄氏と,日本の各界を代表する専門家11氏による対談集である。対談の面白さは2つの光源に照射されて主題が複雑な陰影を帯び,同時に異なる知性が触発し合って発想や連想が自在に飛躍してゆくところにある。この対談集ではさらに,言わば放射状に形成された11の対話軸が,「免疫系を通して見た生命現象」の不思議さや不気味さを,多面的に浮かび上がらせる面白さが加わる。
対談相手は以下の各氏。作家では五木寛之・井上ひさし・日野啓三・白洲正子の4氏。能楽師の橋岡久馬氏。ジャーナリストの田原総一朗氏。自然科学の分野では解剖学の養老孟司,遺伝学の中村桂子,ウイルス学の畑中正一の3氏。さらに宗教民族学の青木保氏・情報科学の高安秀樹氏・多田氏による3者対談。どれに刺激を受けるかは読者によって違うだろうが,評者にとってはガンから生還した日野氏の切迫した息づかいが聴こえてくる,「生命のシステムと言葉」が最も面白く読めた。
各氏とも,多田氏が紹介する免疫系細胞による「自己-非自己の認識作用」と,それがもたらす「非自己の排除」「自己-非自己の融合」「非自己排除の抑制」「非自己を排除した細胞の自死」という4パターンから非常に大きな刺激を受けている。
また多田氏の提出する「免疫系=スーパーシステム」という概念が,心と身体の2元論やデカルト的な還元論,さらには遺伝子レベルでの決定論をも超えて,きわめてダイナミックに運動することがわかる。多田氏はこの「スーパーシステム」という概念を,言語の生成・都市や文化の発展などにも適用しようとする。
むろん,そこに行き過ぎや異和感を感じる読者もあろう。しかし知的精神にとっては,ある意味で異和感の方が共感以上に生産的であることを知るならば,これもまた多田氏から読者への,素晴らしい贈り物であると言えよう。
(C) ブックレビュー社 2000
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