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全編、別の主人公が一人で語る形式で進むという、
かなり斬新なストーリー。
一人漫才のテイストがありつつ、作者にしかない発想がちりばめられています。
御下品な表現が顔をしかめる結果とならない。
それを上回る、独特の雰囲気とオチがそうさせているからです。
特に『構成作家』と『遠洋漁業』が面白かった。
『構成作家』は、テレビ番組の台本を作る主人公が、
新宿のゴールデン街でマスター相手に語り始めます。
その主人公がフィリピンのロケに参加し、
面白いからと大うなぎ(デンキうなぎ)の沼を人工的に作成する。
そんで、主人公が沼に落ちて死にかける。
結局は、カット。
やらせに対するアンチテーゼを伝えたかったんじゃないかと思います。
以前は『あいのり』という番組がガチで恋愛をしていると信じていたので、
その時に読んでいたら、違った読後感があったでしょう。
『遠洋漁業』はバンドをやっているドリアンさんのファンが主人公で、
バンドのメンバーと共にベルリンを旅する。
ここまで書いておきながら、冒頭はドリアンさん視点が挿入され、
主人公の旅日記を拝借して回想する内容です。
リアル写真も挿入されていて、文書と照らし合わせれば面白さ倍増。
作中で最も半自伝的な内容ではないかと思います。
えっ? この文章だとちっとも面白さが伝わらないって?
ならば読んでください。見てください。